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対話や学ぶ姿勢大切 完全オンラインの大学で得たこと

ミネルバのふくろう(10)

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NIKKEI STYLE

特定のキャンパスを持たず、世界中の都市を移動して共同生活を送りつつ学ぶ「ミネルバ大学」。連載「ミネルバのふくろう」は、日本人初の入学者である日原翔さんがミネルバ独特のカリキュラムや学びについて語るものです。10回目の今回はコロナの影響で戸惑う学生や教育現場に向けたメッセージをお伝えします。

ミネルバ大学に通う日原翔です。僕が今滞在しているアルゼンチンも外出禁止令が出て、寮の部屋で過ごしています。

2カ月前はこんなことになると思わず、僕はいつも通りヘッドホンをかけ、いつも通りSpotifyの日替わりプレイリストをやや大きめの音量で流しながら、いつも通り自室でネットサーフィンをしていました。豪華客船のことも、まだ他人事でした。

1カ月半前。この辺りから世界がざわつき始めたのを覚えています。世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルスをパンデミック認定したのが、偶然にも東日本大震災があった3月11日だったから、印象的でした。ここから数日は怒とう。毎日新しいニュースが洪水のように僕の携帯からあふれてくる。やれあの大学が閉鎖しただの、やれ今度はあの国が国境封鎖しただの。感染者数も死者数も指数関数的に伸びていて、"flatten the curve"(直訳は曲線を平らにすることだが、最近はコロナ感染の収束を意味する言葉として使われる)や、"social distancing"(社会的距離)という概念がSNS(交流サイト)を通じて広く普及され始めたのも、この頃。

1カ月前。ついに僕が通うミネルバ大学も、状況的に可能な全生徒に帰国勧告を出しました。いきなりの告知に戸惑いつつも、数日以内に半分近い生徒が寮から姿を消しました。現在滞在しているアルゼンチンの状況が比較的落ち着いているのと、感染を防ぐ一番の行動は「行動をしないこと」ということもあって僕は帰国しないという選択をしたけれど、友人たちが一人また一人といなくなり、状況が文字通り刻一刻と変わってゆく毎日は、本当に世界的災害を目の当たりにしているんだという事実を、肌身に刻みました。

これら全てが、1カ月以内のスパンで起こったのが、いまだに信じられません。

オンラインでも学びは深まる

しかしこのパンデミックの中にあっても、私の大学における学びはストップしていません。講義は通常通り(オンラインで)続行しているし、強いていえば寮からの外出が食材の買い出しに限られたくらい。日本でも多くの学校が休校、あるいはオンライン授業になり、どう学べばいいのか?という不安が生まれていると聞きます。講義が全てオンラインで行われるミネルバ大学に通う私から、いくつかリモート学習に関して知見を共有できればと思います。

まず、オンライン授業で効果的な学習は可能か?という点について。結論からいうと、可能であると私は強く思います。

YouTubeなどで見た知識を覚えている経験は誰しも少なからずあるのではないでしょうか。逆に、通常時の講義の内容や先日友人と交わした会話の内容をほとんど思い出せないという経験も、珍しいものではありません。だとすれば、我々が得る情報がネットという媒体を経由しているかどうかというのは、我々の学習や記憶定着には本質的な影響はないといえるでしょう。むしろネットは情報の宝庫。オンライン化を学習の障害ではなく、むしろ武器になり得ると自覚するだけでも学習効果は変わると私は思います。

通常の講義であれば、浮かんだ疑問を、授業進行を止めてまで教授にぶつけるのは心理的ハードルが高いかもしれません。本当は聞きたいことがあるのに、周りに配慮してその疑問をうやむやにしてしまい、その疑問が解消されないがために、それ以降の教授の発言がなかなか頭に入ってこない、という経験は誰しもがあるでしょう。しかしネット授業であれば、その場でブラウザのタブを開いて検索し、授業進行を一切妨げず、各自検索できる程度の疑問はその場で解消できます。

むしろ、こういった自由度があることによって、学生は授業に能動的に参加することが可能になるのではないかとも思います。ここでいう能動的な参加というのは、必ずしもバーチャル教室内で活発な発言が生まれているということではなくて、学生たちが自ら学ぼうとする姿勢のことを意味します。

教員はファシリテーター

次にもう少し踏み込んで、学生の学習意欲自体を刺激することは可能か、考えてみたいと思います。これはバーチャル授業にいそしむ多くの教育関係者が頭を悩ませる問題ではないでしょうか。ミネルバ大学の場合は、「反転授業」とディスカッション重視の講義形態を採ることでこの問題にアプローチしています。そして、その効果は非常に高いと私は実感しています。

「反転授業」というのは、講義を行うにあたって学生たちに最低限理解していてほしい内容を事前に共有し、それを前提として行う講義のことです。コンテンツが事前に共有されているので、学生は各自のペースで効果的に予習を行うことができます。また、出席する段階ですでに新鮮な基礎知識が頭に入っているので、講義の内容も理解しやすいし、本質的な質問も出てくるので、参加意欲は通常より高くなります(授業の詳細は第5回でも紹介しています)

少人数でのゼミ形式が可能なのであれば、ディスカッション重視の講義は反転授業の効果をさらに高めることになるでしょう。生徒同士で意見を交わすことで、予習してきた内容により深みを与えられます。一方通行での知識伝授ではないので、学生の脳もより活発になりますし、何より同級生たちの話を聞く方がやはり教授のお話よりも楽しいのです。

このとき一点だけ注意したいのは、教員は直接教えることよりも対話のファシリテーターの役割を意識するということです。パワーポイントを作ることよりも、どういう質問やトピックを投げかければ生徒の思考をより促進でき、対話のレベルを高めることができるのか、ということが重要ではないかと、ミネルバの教員や授業を見ていて強く思います。

初期の段階では学生もガンガン発言するのに抵抗があります。必要であれば、様子を見ながら特定の学生に名指しで意見を求めるなど、多少強行的な措置をとってもいいかもしれません。意見の発信が当たり前であるという状況に慣れてくれば、名指しもやがて必要なくなってくるはずです。

知識欲を刺激するような環境を与えれば、大半の学生はのびのびと学習します。「オフライン vs オンライン」という視点ではなく、どうすれば学びが楽しくなるような環境づくりができるか。この点さえおさえれば、あとは学生同士で勝手に、それも非常に効果的に、学んでくれるのではないかと思います。

ネットは「世界図書館」

学校という枠組みの中での話をここまでしたが、その枠組みの外での学びについても少し触れたいと思います。外出頻度が減った今、自宅で過ごす時間は多いでしょう。必然的にネットに触れる時間も多くなる。この状況を自宅でニートしているのではなく、「世界図書館」に籠っていると思えば、どれだけの学びが可能かは明らかです。料理が好きな人はいくらでもネットでレシピ動画をあさって、実際に作ってみたらどうでしょうか。積読しておいた書籍を読みあさるのでも良いし、なんならたまっていた映画を消化するだけでもいい。

好きなことをするというのは、なんでも学びのあるものです。ネットはその好きなことに触れる第一歩としてとても優しいものだと私は思う。ネットに触れる時間が増えた今、「どうすれば学びを継続できるのか」といった肩の力を抜いて、好きなことに没頭すると決めるのも一手です。

最後に、僕がミネルバで本当に学んだのはオンラインの授業形態よりも何よりも「他者に接する心」であることを付記しておきたいと思います。

こういう天災のときには、僕たちの持つ共感力や社会性というものを発揮して乗り越えるしかないのだと思います。困っている人がいたら、助ける、という当たり前のことが大切になってきます。ここアルゼンチンでも、数週間前に外出禁止令が出ました。経済が急に止まるものだから、仕事を失ったホームレスの人たちが日増しするのが目に見えます。食材の買い出しに出かけるだけで、4~5人には「お金を恵んでくれないか」「食べ物を持っていないか」と声をかけられるのです。そんなときに、彼らを無視して通り過ぎることは僕にはできません。状況が違えば立場が逆だったかもしれないのですから。

こういう大変な時期こそ、周りの人に一歩優しく接することを心がけて、みんなで胸を張って乗り越えていきたいと、強く思います。アルゼンチンから、願いを込めて。

日原翔(ひはら・しょう)
1998年埼玉県生まれ。聖光学院高等学校を中退し、経団連の奨学金制度でカナダのPearson College UWCに2年間留学。2017年9月よりミネルバ大学に進学。身体を動かすことが好きで、現在はダンスに熱中している。科学や政治経済にも関心を持っており、自身の将来像は未だに悩みあぐねている。座右の銘は「二兎を追う者のみが、二兎をも得る」

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