日曜朝に二度寝 まどろんだとき夢を見るのはナゼ?

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/4/28
ナショナルジオグラフィック日本版

写真はイメージ=PIXTA

日曜日の朝、ふと目が覚めた後、休みであることを思い出してウトウトと二度寝をしたら、すぐに夢を見たという経験をお持ちだろう。

二度寝で見る夢はかなり明晰で、内容も彩り豊かであることが多い。暖かい布団の中で心地よい夢を見て、つかの間、休日の朝を楽しんだことのある人も多いと思う。

「まどろみ夢」はナゼ出現するのか? それは睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、それぞれ調整メカニズムが異なることに関連している。

一般的に夢はレム睡眠中に見ることが多いのはよく知られており、まどろみ夢も主にレム睡眠中に起こる(「夢は「レム睡眠」のときに見るのウソ」参照)。二度寝でまどろみ夢を見やすいのは明け方にレム睡眠が起こりやすいからである。逆にノンレム睡眠は明け方に少ない。

イラスト:三島由美子

では、そもそもナゼ、レム睡眠だけが明け方に多いのだろうか。それを理解するカギはレム睡眠とノンレム睡眠の調節にそれぞれ関わる2つの時計のタイプ、すなわち「腕時計」型と「砂時計」型の違いにある。

まずはレム睡眠から説明しよう。レム睡眠は体内時計が刻む24時間周期の生体リズムに強く支配されている。言い換えれば、レム睡眠は「腕時計」型のアラーム機能によって出現する。そして、明け方から午前中にかけて出現しやすいようにセットされているのだ(体内時計についての詳細は「朝食で体内時計リセットのウソ 早寝早起き効果に疑問」を参照)。

一方、ノンレム睡眠は、恒常性維持(ホメオスタシス)機構によって制御されている。恒常性とは、血圧や血糖、代謝などの体内環境を一定に保とうとする現象のことで、睡眠と覚醒のバランスもその一つ。覚醒している時間が長いほど、疲労が蓄積しているほど、その後に出現するノンレム睡眠は深く、長くなる。すなわち、恒常性はいわば「砂時計」のようにノンレム睡眠の持続時間を決めている。

寝ついた直後にこのノンレム「砂時計」はひっくり返される。覚醒中の疲労回復が睡眠の至上命題だからである。

その結果、深いノンレム睡眠から眠りはスタートする。幸いこの時間帯はレム睡眠の勢いはまだ強くない。その後、「砂時計」の砂が落ちるように、恒常性の圧力が徐々に解消され、入眠してから3時間後、平均的な時刻で言うと午前3時~4時ごろ以降は浅いノンレム睡眠が主体になり、明け方には「腕時計」に指示されたレム睡眠と主役が入れ替わる。

「腕時計」と「砂時計」は競合するのではなく、通常は相互にうまく連携している。

例えば、深部体温(脳の温度)は体内時計の強い支配下にある「腕時計」型の生体機能なのだが、「砂時計」の働きもサポートしている。深部体温は普段寝つく時刻の2時間ほど前に最高温度に達した後、「砂時計」型のノンレム睡眠が集中する睡眠の前半期に急速に低下する。これはノンレム睡眠の目的の一つが脳の冷却にあることを考えると合理的である(詳細は「お風呂で快眠できるワケ」を参照)。そして、下降を続けた深部体温が明け方に最低温度となり、これから反転して上昇しようかという時間帯で入れ替わるようにレム睡眠の勢いが最高潮になる。朝の二度寝のまどろみ夢は正にこのタイミングで出現する。