非常に狭い5Gエリア、1年間は体験自体が困難に

最後に、5Gのエリア整備状況をみてみる。結論から言うと現状は3社とも「点」、つまり非常に限定された場所をスポット的にしかカバーできていない。

3社は5Gのサービス開始に合わせて利用可能なエリアの一覧を公開しているが、それを見ると「○○町○○丁目周辺」「○○スタジアム観客席」「〇〇ショップ内」といったように、カバーエリアがかなり限定されている。4Gのように広いエリアで5Gが利用できる状況には、ほど遠い。

ソフトバンクのエリアマップ。ピンク色が20年4月末時点、黄色が20年夏以降予定の5Gエリア。東京都心でさえ限定的なエリアしかカバーできていないことが分かる

各社とも、20年夏以降のカバーエリアの拡大計画を公表しているが、それでもエリアは限定的だ。つまり国内の5Gは、「狭い」と言われる楽天モバイルの4Gエリアよりもはるかに狭い状況が1年近く続く。5Gスマホを購入しても当分、5Gを体験すること自体が難しいかもしれない。

なぜこれほどまでにカバーエリアの拡大が進んでいないのかというと、5Gではこれまでより高速大容量の通信を実現するため、4Gよりもかなり高い周波数を使う必要があるからだ。高い周波数帯の電波は障害物の裏に回り込みにくく遠くに飛びにくい。一部の周波数帯は衛星の電波と干渉してしまうなどの課題もあり、容易にエリアを広げられない。

ソフトバンクは21年末まで、NTTドコモとKDDIが22年度末までには現在の4Gに近いエリアカバーを実現するとしている。ソフトバンクが早期に広範囲のエリアをカバーできるのは、4G向けの周波数帯を5Gと共用する技術を導入することを見込んでいるからだ。このため5Gのエリアは広がるが通信速度は4Gと変わらない可能性が高い。

NTTドコモは当初計画を2年弱前倒しし、22年3月末に2万局の5G基地局を設置して4Gに匹敵するエリアカバーを実現するとしているが、それでも2年近くかかってしまう

総合的に考えて、一般消費者が5Gの契約を急ぐ必要は「全くない」。とはいえ5Gの契約者も4Gのエリアで通信することは可能だし、4Gでも実測値で下り100Mbpsを超える通信速度を実現できる。5G向けの大容量プランはデータ通信が使い放題になるものが多く、「ギガが減る」ことに神経をすり減らさなくてすむ。こうしたことからスマホで頻繁に動画やゲームなどを楽しんでいるような人は、5Gへの乗り換えを検討してみるのも一考だろう。

佐野正弘
 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。