部下の感情にも寄り添う トップに欠かせない信頼感シスコシステムズ・アジア地区代表 鈴木みゆき氏(下)

「部下に『君はこれができなかったじゃないか、もっと頑張れ、数字に賢くなれ』などと、苦手な点を指摘して改善の指示を出してもうまくいきません。『君は数字はまあまあだけど、創造力や企画力はすばらしい。営業トークも断トツにうまい』などと個人の長所を見定めて、チーム構成を考えるべきです。社員の長所短所をどのような形で組み合わせていくかを考えるのもリーダーの役割の一つだと思います。またリーダーはオーセンティック(信頼できる)でなければいけないと思います。人を導くには、その人の信頼を得ないといけません。信頼を得るためには誠実であり、オーセンティシティー(信頼性)を常に気にかけて行動することが欠かせません」

――今につながるような仕事での成功体験はありますか。

「最初の体験は英ロイター通信(現トムソン・ロイター)で働いていたときです。1982年の入社当時は急成長していた時期でした。入社して2カ月後にはバーレーンで営業を担当してくれと言われました。その後の5年間でシンガポール、インドネシアのジャカルタ、ニュージーランドと転勤が続きました。ニュージーランドでは営業拠点を立ち上げました。事務所の物件探しから法的な登録、人を雇うなど全部やって、小さいながら現地のリーダーになりました」

長いキャリアの中で海外で働くことが多く、多様性の重要性に気づいた

「ちょうどニュージーランドで政策が変わった時期だったこともあって、成長率ではロイターの拠点の中で一番大きかったときもありました。満足感というか、これだけ踏ん張って頑張ってきた価値があった、やりがいがあったと初めて感じました。これからビジネスの世界で頑張っていこうと思えましたね」

――失敗した経験はありますか。

「私はずっと営業職のキャリアなので、競争相手に取引を奪われることがある意味失敗なんです。でも、一番大きな失敗は99年に自分の企業を興したものの、うまくいかなかったことです。電子商取引(EC)をサポートするための決済システムを開発して、ベンチャーキャピタル(VC)から500万ドルを調達して会社を立ち上げました。今でもいいアイデアだと思っていますが、EC自体が未熟だったんですね。なかなか売り上げが伸びず、2001年の米同時テロなどもあって厳しい状況が続きました。三十数人の従業員がいたので、技術と方針を継続してもらえる条件で2001年末、マレーシアの企業に買ってもらいました。でも個人的にいい勉強になったと考えています。時期を見誤ってはいけないとか、従業員に責任を持つとはどういうことか、など色々学びました」

――リーダーとしての在り方を学んだ人はいますか。

「今の上司のジェリー・エリオットさんですね。シスコ本社のエグゼクティブバイスプレジデント兼最高セールス&マーケティング責任者で、グローバル営業とマーケティングのトップです。お客様志向がものすごく強いのです。私が出会った経営層の中でも、一番強いかなと思うほどです。顧客の意見やフィードバックを真摯に受け止めて、即座に行動に移すという姿勢が私にとって魅力的だし、学ぶことが多いと感じます」

「例えば、彼女は顧客と対話するとき、電子メモに一言もらさず書いていきます。さらに自分が理解できたかと顧客に確認するのです。いい習慣だと思いますし、営業としてお手本のような姿勢です。それだけでなくて、温かみのある、共感力にあふれた人柄なのです。社内外の人を引き寄せる力を持っていて、私もリーダーとして見習いたいといつも感じています」

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経営層は社内外の人脈も求められる
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