教師のヒントが教育効果損なう 必要なのは学びの幅デイビッド・エプスタイン『RANGE(レンジ) 知識の幅が最強の武器になる』より

 ある研究では、スペイン語の単語の学習者を二つのグループに分けて実験をした。一つのグループは、単語を学んで同じ日にテストを受け、もう一つのグループは1カ月後にテストを受けた。その後、その単語について何も勉強しない状態で、8年後にもう一度テストした。すると、1カ月後にテストしたグループは、同日にテストしたグループよりも、覚えていた単語の数が2.5倍以上だった。(中略)
 アイオワ州立大学の研究者たちは、被験者に単語のリストを読んで聞かせ、その後、被験者に覚えている単語を言わせた。すぐに言わせたグループと、15秒の練習時間を置いて言わせたグループ、練習させないために15秒の間、簡単な計算をさせてから単語を言わせたグループの三つがあった。最もよくできたのはすぐに言わせたグルーブで、次が15秒の練習時間を取ったグループ、最下位が15秒計算したグループだった。そして、全員がテスト終了と思った瞬間に、抜き打ちテストが実施された。リストの中で覚えている単語を紙に書き出しなさい、という指示だ。
 すると、最下位だったグループが突然1位に躍り出た。短い時間の練習は、効果も短かった。反対に、計算問題をしたグループは、単語を忘れないようにしようと頭を悩ませ苦労したことで、短期的な情報を長期的な記憶に変換することができた。すぐに復唱したグループとすぐに練習したグループは、抜き打ちテストではほとんど何も答えられなかった。繰り返すことは、頭を悩ませることほど重要ではなかったということだ。(第4章「速く学ぶか、ゆっくり学ぶか」 125ページ)

「ごちゃ混ぜ学習」で応用力アップ

このほかにも「望ましい困難」の実践方法として、「インターリービング」という手法が紹介されている。インターリーブとは、さまざまなことを混ぜて学習する、という意味だ。

 たとえば、あなたが美術館に行く予定があり、今まで見たことがない絵画でも、その作家(セザンヌか、ピカソか、ルノワールか)を言い当てられるようになりたいと考えたとする。美術館に行く前に、あなたはセザンヌの絵が印刷された暗記カードを山ほど学習し、続いてピカソの暗記カード、ルノワールの暗記カードと続けていくこともできる。しかし、その代わりに、暗記カードを全部一緒にして混ぜ合わせる。つまり、「インターリーブ」する。練習の間は、あなたは頭を悩ませる(また、あまり自信もない)。しかし、美術館では、画家のスタイルを見分けられる能力がより身についていると感じるはずだ。暗記カードになかった絵でも大丈夫だ。(第4章「速く学ぶか、ゆっくり学ぶか」 133ページ)

「望ましい困難」の活用によって、知識が頭から離れなくなり、長期的なものになる。そして、「関係の認識」やインターリービングなどを経験すると、知識は柔軟になり、練習中には登場しなかった問題にも広く活用できるようになるという。さまざまな学びをスタートさせる4月、「真の学び」を習得できるこうした手法を活用してほしい。

(日経BP 沖本健二)

RANGE(レンジ)知識の「幅」が最強の武器になる

著者 : デイビッド・エプスタイン (著), 中室 牧子 (その他), 東方 雅美 (翻訳)
出版 : 日経BP
価格 : 2,090円 (税込み)

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