教師のヒントが教育効果損なう 必要なのは学びの幅デイビッド・エプスタイン『RANGE(レンジ) 知識の幅が最強の武器になる』より

学習効果を飛躍的に高めるのは「望ましい困難」

学習者が「真の理解」に近づくには、丸暗記した公式などをぱっと当てはめて問題を解くのではなく、その公式が持つ意味は何なのか、なぜ公式として成立するのかを腑(ふ)に落ちるまで考え続ける必要があるというわけだ。丸暗記した場合に比べると、時間が長くかかり、とてももどかしく感じる。ところがこうした「悩ましい感覚」を味わうほど、どうやら学習効果は高いようだ。

 (認知心理学者の)ネイト・コーネルはこの時、「望ましい困難(desirable difficulty)」について話していた。それは、学習における障壁を指し、短期的には学習を難しく、より苛立たしく、時間のかかるものにするが、長期的にはより高い効果をもたらすという。先ほど紹介した中学2年生の数学の授業のように、ヒントを与えすぎるとその反対の影響が生じて、短期的な成績は高まるかもしれないが、長期的な進歩は妨げられる。(中略)
 「望ましい困難」にはいくつかあるが、そのうちの一つは「生成効果(generation effect)」として知られている。自分一人で答えを出そう(生成しよう)と奮闘することは、たとえ出した答えが間違っていても、その後の学びは強化される。ソクラテスが弟子たちに、答えを授けるのではなく、自ら考え出すよう強いていたのは、ソクラテスがそこをよくわかっていたからだろう。学習者がこれを実行するには、将来のメリットのために、現在のパフォーマンスを意図的に犠牲にしなければならない。(第4章「速く学ぶか、ゆっくり学ぶか」 120ページ)

教師と生徒という関係では、教師が「望ましい困難」を生徒に与えるために、「関係を認識させる」ように導いていけばよいが、語学などを自分一人で学習する場合には、どうしたらいいだろうか。

『RANGE』では、「望ましい困難」を自らつくり出す方法として、「間隔を空けた練習」「分散した練習」を推奨する。文字通り、時間の間隔を空けて、同じ内容の練習をすることであり、その練習が大変であればあるほど学習効果は高いという。

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