音楽は一瞬で言葉の壁を超える

きっと、多くのギタリストからすれば僕のギターは「邪道」なのかもしれません。でも、それでいいんです。もちろん伝統に最大限のリスペクトを払いますが、それと同時に僕の役割は逆につくられた壁・様式を壊し、何かを創造すること。「邪道」も突き詰めていくことで、いつしかそれが「王道」になって行くと思うし、未来のフェンダー、そしてギターそのものの可能性を広げることにもなるかもしれない。また、いろんな側面を持つこのギターは、世界中を旅する僕の活動スタイルにすごくマッチしています。あれがなければだめ、これもないと……と言っていては、世界は待ってくれない。ギター1本を抱えてどこでも勝負できる状態にしておく必要がある。最初の音色を聴いた瞬間に「MIYAVIの音だ」と分かるギターが1本あれば十分。それに、たくさんギターを持ち運ぶとエクストラバゲージ、超過料金もかかりますからね(笑)。

「ギター1本を抱えて世界中どこでも勝負できる状態にしておく必要がある」

特に、UNHCRの親善大使を務めるようになってから、身軽さが重要だとより感じるようになりました。どんな場所でも、ギターを鳴らすと子供たちは笑顔になってくれる。音楽は一瞬で言葉の壁を超えるし、心を一つにできる。エンタテインメントの力を目の当たりにする瞬間です。

目の前に危機が迫っているときに必要なのは ライフライン、医療、食料。それ以外にはありませんし、その次に必要なものは教育です。エンタテインメントはその先にあるものですが、食べて寝るだけでは、やはり人って生きた心地がしないんですよ。親善大使として巡ったケニアやコロンビア、バングラデシュなどでもそれを痛感しました。

飛行機の中で、ふと曲が生まれることも多いですね。僕の作る音楽は単なるラブソングではないから、日々の経験が創作の糧になっているんです。新しいアルバム「Holy Nights」もそんな日常から生まれました。「聖なる夜」というタイトルは、僕が住んでいるロサンゼルスの静かな夜からヒントを得ました。大都市だけど自然も近くて、きれいな星空も見える。そんな穏やかな生活がある一方で、ふと見渡すと「世界は燃えている」。世界各地で起きる森林火災はもちろん、異常気象がもたらす災害、難民問題、広がり続ける貧富の格差、国同士のあつれき、そして、まん延する新型コロナウイルス……。隣人とトイレットペーパーを奪い合うのではなく、互いにコンセンサスを取りあっていかなきゃだめだと強く危惧します。

アルバム「Holy Nights」のタイトルはロサンゼルスの静かな夜からヒントを得たという
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