NASAが頼ったベンチャー眼科医 網膜疾患に挑む窪田製薬ホールディングス 窪田良社長(上)

窪田製薬ホールディングスの窪田良社長はもともと眼科医
窪田製薬ホールディングスの窪田良社長はもともと眼科医

「世界から失明を撲滅する」――。壮大な理想を掲げて、米ワシントン州シアトルにあった自宅地下室でバイオベンチャーを創業した日本人がいる。窪田製薬ホールディングス(HD)の代表執行役会長・社長兼最高経営責任者 (CEO)である窪田良氏だ。窪田氏はもともと眼科医。なぜ、バイオベンチャーの創業を決意したのか。

(下)人はある日突然に成長する 眼科医が創薬起業した理由 >>

「新薬の開発で、モノになるのは3万分の1の確率といわれています。イノベーションを起こすなら、2万9999回もの失敗をしてもやり抜く覚悟が必要。それでも、難病を治せる新薬が開発できたら社会的なインパクトは大きい。そのためにリスクを取り続けています。リスクを取る、また変化を受け入れるというのが、子供のころに米国で苦しんで勉強した経験のおかげか、あまり苦にならないタイプなんですよね」

新薬開発のベンチャー企業「アキュセラ」を2002年に創業した。眼疾患の治療に特化した創薬や診断システムのイノベーションが事業のメインだ。医学・医薬系のスタートアップが多いことで知られる米ワシントン大学で助教授として勤務しているころに設立した。

日本の医薬・医療系の大手企業やベンチャーキャピタルから多額の資金を調達して14年2月に東証マザーズに上場。その後、16年12月に日本に拠点を移して窪田製薬HDを設立。アキュセラを完全子会社とするとともに東証マザーズに再上場した。

NASAから見込まれ、共同開発

窪田製薬は19年3月、米航空宇宙局(NASA)と共同開発契約を結んだ。宇宙空間で網膜や視神経を検査して眼の疾患がないかどうかを判定できる、携帯可能な超小型の診断機器を開発するためだ。

宇宙に長期滞在した宇宙飛行士の6割以上は、目の疾患にかかっていることが最近になって分かったという。視神経が腫れる、眼球の一部が平たくなるなどの症状がみられ、そのまま放置すると、視力障害を起こしたり、最悪の場合は失明したりするリスクがあるという。

「原因ははっきりしていないのですが、離陸時や宇宙飛行の際に体液や脳脊髄液が眼球などを圧迫するためではないかと考えられています」

窪田氏は自身も大学院生の時にNASAで宇宙飛行士になる試験を受けたこともある。「結果はダメだったので、宇宙飛行士になるのは諦めましたが、NASAの仕事はしたいと思っていました。それを周りの人などにも話していたら、『宇宙飛行士の眼疾患についてNASAが悩んでいる』と教えてくれた人がいて。当社がそのソリューションをたまたま持っていたのがきっかけとなりました」

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