解決策:記憶に残る読みづらいデザイン

UTokyo Goのロゴマークは、行動を促す「Go」という前向きな言葉を使用している。ポイントは「UTokyo Go(東大に行こう)」というメッセージをあえて隠すようにデザインしたことだ。Goの「o」が小さいため、読み方が分かりづらい。それこそ実は、ブランドを少しでも多くの人に「記憶」してもらうための仕掛けである。

ロゴマークを初めて見た人は、スムーズに認知できず多少ストレスを感じる。そのほうが記憶に残りやすいという最新の研究結果があるのだという。「脳はパターン認識が得意なので、どこかで見たことがある分かりやすいものはすぐ認知できる。しかし、その分、忘れられるのも速い。その一方で、分かりづらいもののほうが認知するのに負荷がかかる分だけ強く印象に残り、記憶されやすいといわれている。その考えを参考にしながらデザインした」(北川氏)。UTokyo Goというストレートなメッセージの一部を抽象化したことで、ステレオタイプの東大のイメージとは違う、クールな印象にもなった。

UTokyo Goのロゴマーク。Goの「o」をあえて記号のようにデザインしているので、初めて目にした人は「どう読むのだろう」と疑問に思うだろう。「Go」という読み方に気づけるように、商品には必ず「THE UNIVERSITY OF TOKYO GO」というロゴも入れている

最新のデジタル機器などと一緒に持ち歩いても遜色のないデザインでありつつ、さりげなく遊び心があることも特徴の一つ。Goというネーミングは、合格という意味も重ねて、鉛筆は五角形のものを選んだ。側面には合格を「Go」のマークとして配している。鉛筆を削って側面のマークにたどり着くことに、受験生が「Go」に手が届くという願いを込めれば、たくさん書いてたくさん勉強しようというモチベーションアップにもつながるはずだ。

独創的なデザインに納得できる

UTokyo Goというブランド名とロゴマークを最初に見たときの印象について、東大の渡辺氏と島津氏はこう話す。「これまでのUTCCにはないスタイリッシュなデザインなので、もしかしたら格好良すぎるかもしれないと思った」(渡辺氏)。「フックをつくって印象付ける論理的なコンセプトに共感していたので、私はすんなり受け入れられた」(島津氏)。

価格については、大学内でも議論になったという。「先生や学生からも『高いのではないか』との声は多かった。しかし発売以来、想定以上に売れているので、提案を受け入れてよかったと思っている」(島津氏)。

島津氏は公開講座やオープンキャンパスの運営なども手掛けており、イベントの特設サイトなどにUTokyo Goのバナーを出したり、講座で配布するテキストに広告を入れたり、休憩時間のモニターにUTCCの情報を流したりしているそうだ。「UTokyo Goを立ち上げてから、これまでとは異なる客層にリーチできていると感じる。今後どんな影響が出てくるか楽しみにしている」(島津氏)。

東大本郷キャンパス内にあるUTCCの店内。店舗はこのほか、UTCCのオンラインショップと、東京駅直結の商業施設KITTE内にある東大の博物館「インターメディアテク」にもある

(画像提供/GRAPH)

(ライター 西山薫)

[日経クロストレンド 2020年3月31日の記事を再構成]

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