息抜きにジョークはいかが ちょっと大人向け小話集
立川談笑
またまたジョーク集です。理由は、今こそ笑いが必要だと思うから。
小話は古いものから新しいものまで、しっかりメンテナンスを施してご提供しますよ。ジョークとは、理性ある大人にとっての息抜きです。特に今回は大人向けが多いのでご注意くださいね。では、たっぷりとどうぞ!
昆虫愛好家
あるマンションの一室。若い男と若い娘が、お互いに貴重なオオクワガタのオスとメスを持ち寄って繁殖のための交尾をさせていた。
昆虫の行為をみつめていた男が、何を思ったのか娘に、
「お、俺だって、こんなふうにできるんだぜ」
「……うっそ。何てこと言うんですか」
「マジで。できるっていうか、やりたいんだ」
「無理だよ。無理、無理」
「俺だってオスなんだ。メスを前にしたら、本能なんだ! やりたい! やらせてくれ!」
「そりゃアタシだって興味あるっていうか……うん。わかった。やさしくしてね」
「うんっ」
男がすっかり準備をする。娘は目を輝かせてメスのクワガタを男の前にそっと置くと
「さあ、いいわよ。やってみて!」
大嫌いな奴(やつ)と出会ったら
「おーい! 久しぶり!」
「ああ、おまえか。偶然だな、こんなところで」
「何年ぶりだろうな。どうしてる」
「そう! いいジョークがあるんだ。『最低で大嫌いな奴と会ったら』ってやつ。知ってる?」
「知らない」
「じゃあ教えてやるよ。たとえば大嫌いな奴と街で会ったら、おまえどうする?」
「そうだなあ。まずは目も合わせたくないな。口もきかない。まあ、とにかくその場を立ち去るだけだけかな……。おい、ちょっと! おーい!!!」
丸ノ内線の幽霊
乗客もまばらな地下鉄の車内で、隣に座った男が小声で話しかけてきた。
「ねえ、すいません。ちょっといいですか?」
「……ん? あ、ぼく……ですか?」
「はい。いきなり失礼します。あのぉ、丸ノ内線の幽霊の話って、ご存じですか?」
「……へ?」
「いや、これはさすがにちょっとお話しすべきかと思って。丸ノ内線の幽霊。この車内に、幽霊が出るんですって。時おり現れては乗客のひとりだけに取り付いて……」
「ちょっと! 気持ち悪い話はやめてくださいよ。何なんですか」
「きっとあなたが今、その幽霊に取り付かれようとしてるんですよ」
「よしてくださいよ」
「だって目の前を見てください。さっきからあなただけをジッと見てるんですよ。ほら、向かいにポツンと座ってる小柄なおじいさん。何となく影が薄いでしょ?」
確かに、向かいの席に座ったひとりの老人がじっとこちらをみつめている。
「……た、たまたまこっちを見てるだけでしょ。何かあったのかな? 若いのがふたりで何か話してるな、くらいの、普通の興味ですよ」
「でも、ホラ! あっはっは。あなたしか見てない。こうして話をしてる私の方にはまったく興味がないんですよ。この、気味の悪いおじいさんは!」
「やめなさいよ、大きな声で! 失礼でしょう」
「ほら。目線が動かないもの。あなた、完璧に狙われてます。噂は本当だったんだ。珍しいもの見たなあ。幽霊、ロック・オン!」
「な、な、何言ってんですか。幽霊なんて、いる、いるいるわけないでしょうが」
「だってどう考えたって普通じゃないでしょ、これは。うわ、動いた! 立ち上がった! 来るよ、おじいちゃん! 幽霊、来るよ! うわあ来たあ!」
「うわ、わわあ~!」
「おいおい。どうした、お兄ちゃん? さっきから独り言ばかり言ってるけど、大丈夫かい?」
早朝のゴルフ練習場
「ああ、どうも。おはようございます!」
「おはようございます。お久しぶりです」
「お元気そうでよかった。ここで毎朝のようにお会いしてたのに、いきなりお顔を見なくなったんで心配してたんですよ。仕事が忙しかったとか?」
「いえ。実を申しますとね。私があんまりゴルフにのめり込んでるもんだから、とうとうカミさんがへそ曲げちゃったんですよ。『あんた、いいかげんにしなさい! ゴルフと家庭とどっちが大事なのッ?!』って」
「あっはっは。ウチも全く同じだ。セリフも全部一緒。『ゴルフと家庭とどっちが大事なの!』って」
「わっはっは! ですよねえ。どこも同じ。で? おたくの方は、いま、新しい家族とはうまくいってます?」
婚約指輪を買ってきた
「受け取ってくれ。エンゲージリング」
「……えっ」
「給料の3カ月分。思い切って買ってきちゃった。あはははは。……エヘン、オレと結婚してください!」
「もらえないヨ。ゴメン」
「……ど、どういうことだよ?」
「実はさ、ある人と今度結婚することになって……」
「ふざっけんなよ! マジかよ!」
「ゴメンね」
「ゴメンじゃねえよ。この指輪どうしてくれんだよ。給料の3カ月分だぞ。どこの男だよ? どこに住んでんだよ? 名前と住所教えろよ。職場教えろよ。直接話をさせろよ!」
「やめてよ。乱暴したりしないで!」
「しないよ! じゃあオレの代わりにそいつに聞いてみてくれ! この指輪、いくらかで下取りしてくれないかって」
スーパーの野菜売り場で
ひとりの紳士が店員に声をかけた。
「ちょっといいかな。このトマト、半分だけ買いたいんだけど……」
「は? トマトを、は・ん・ぶ・ん?」
「うん。こう、切ってさ。半分だけ。単身赴任だから、ひとつじゃもてあますんだよね」
「ちょっと店長に聞いてきます」
「……店長~ッ!」
「どうした」
「あーもー、客はバカ! あったま悪すぎ! トマトを半分だけ売ってくれって、口開けて来た、バカヤロが。半分売ったら、残りをどうするんだっつの」
「……シッ!(後ろを見ろ!)」
「(客の姿に気付いて)あっ……。こちらのお客様がその残り半分をお買い上げいただけるそうです」
街頭インタビュー
「民主主義の根本に立ち返れば、国民の意思を政治に反映させるには現在の小選挙区制度を見直す必要がある。と、このような議論があります。この点について、まずは知っているか知らないか。また、知った上でも関心があるかないか。それが大問題なんです。この違いがお分かりになりますか?」
「わからねえし、しったこっちゃねえね」
刑務所の雑居房で
「おい、新入り。おめえ、どんな悪さして食らいこみやがった? 言ってみろ」
「いやー、たいしたことやってませんよ。ストレスがたまってたっていうか。カッとなって職場の壁にドカンと穴あけてやったんです。スッキリしました」
「嘘つけコノヤロが。職場の壁に穴あけたくらいで実刑くらうはずねえだろ」
「ふっふっふ。おじさん、原発で働いたことないだろ?」
ではまた。穏やかに健やかにお過ごしくださいね~!!!
1965年、東京都江東区で生まれる。高校時代は柔道で体を鍛え、早大法学部時代は六法全書で知識を蓄える。93年に立川談志に入門。立川談生を名乗る。96年に二ツ目昇進、2003年に談笑に改名、05年に真打ち昇進。近年は談志門下の四天王の一人に数えられる。古典落語をもとにブラックジョークを交えた改作に定評があり、十八番は「居酒屋」を改作した「イラサリマケー」など。
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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