映画の主人公、顔だけ僕と入れ替わり 高速でCG作成早稲田大学 先進理工学部 森島繁生(3)

ナショナルジオグラフィック日本版

「フューチャーキャストシステム」を開発した森島繁生さん。
文筆家・川端裕人氏がナショナル ジオグラフィック日本版サイトで連載中の「『研究室』に行ってみた。」は、知の最先端をゆく人物を通して、世界の不思議や課題にふれる人気コラム。今回転載するシリーズは、生きた人間の動き、とくに「顔」をCGで再現する研究がテーマです。人工知能(AI)を使ってより実物に近いコピーを生み出そうとすると、かえってまねが難しい人間らしさの価値に気づく、そんな面白さがあるようです。表情豊かに顔と向き合う師弟の姿も伝わってきます。

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フューチャーキャストとは、映画を見に来たお客さん自身がその映画に登場し、「自分が活躍する映画」を楽しむことができるシステムだ。

2005年に愛・地球博のパビリオンのために作られた作品『グランオデッセイ』で、はじめて実現した。来場者は待ち時間のうちに顔を三次元スキャンしてもらい、そのデータを映画の中に反映させる。博覧会が終わった後も長崎のハウステンボスに移設され、12年近くにわたって人気コンテンツとして活躍した。

デモを見せてもらったが、宇宙を舞台にした活劇で、派手な戦闘シーンや宇宙船のオペレーターなど、さまざまな役割の登場人物が登場し、それらの一つ一つに「実在の」人の顔が使われているということだった。その中に「自分」の顔があるなら、まずどこにいるか探すところから始まって楽しめそうだ。

「実は、これは1998年にやった研究がもとになっているんです。『The Fugitive(逃亡者)』という映画で、主演のハリソン・フォードと助演のトミー・リー・ジョーンズの顔を、それぞれ別の人、というか、うちの学生の顔で置きかえる実験をやって、要は観客が主人公になったり、登場人物になったりすると、こんなに面白いよっていうのを実写の映像で再現するデモをつくりました。映画の中の顔の向きをトラッキングして、その向きに合わせた学生の顔のモデルをつくって、オリジナルで言ってるのと違うセリフに合わせて口の動きを合成して、自分のオリジナルの作品をつくりましょうみたいな。それで、SIGGRAPH(シーグラフ)に論文を出したんですが、リジェクトになって返ってきました。その理由は『ハリソン・フォードの肖像権はちゃんとクリアできてるんでしょうか』でした」

SIGGRAPH(シーグラフ)とは、アメリカコンピュータ学会(ACM)の中でコンピュータグラフィックスなどを扱う分科会のことで、毎年、ロスアンゼルスを中心に開催される。「分科会」とはいえ、規模は超巨大で、CGのみならず、コンピュータゲームやメディアアートといった関連ジャンル、VRなどの新興技術をカバーし、研究発表だけでなく数々のデモが展示される。研究者にとっても、関連業界の人々にとっても、祝祭的なイベントだ。森島さんの研究室のメンバーは、SIGGRAPHをひとつの大きな研究発表の場として位置づけている。1994年の初参加以来毎年欠かさず学術的な貢献を続けてきた。1998年の研究は、技術的には大いに見るべきものがあると多くの人が納得しつつも、「ハリソン・フォード」の肖像権問題ゆえに発表できずに終わってしまった。

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