男子トイレきれいに保つには アイデアを生む行動観察第2回 人の意識を変えるためのアイデアの作り方

2020/4/8

プロが教えるアイデア練習帳

写真はイメージ =PIXTA
写真はイメージ =PIXTA

「良いお手本をたくさん見ること」。アイデアのプロ集団、広告会社、博報堂でディレクターを務める岡田庄生氏は、事業会社で良質のアイデアを生み出せるようになるには、この練習法が有効といいます。様々な練習問題を収録した岡田氏の著書「プロが教えるアイデア練習帳」(日経文庫)から、その一端をのぞいてみましょう。

≪問題≫
中学校の男子トイレをきれいに保つためのアイデアとは

もしあなたが学校の用務員さんだったら、どのようなアイデアを考えますか?

張り紙は本当に効果があるのか

一般的な暮らしの中の問題です。ぜひ肩の力を抜いて気軽に考えてみてください。

設定は、中学校の男子トイレです。立って用を足す方の小便器は、跳ね返りを防ぐような機構になっていたり、自動で水が流れるしくみがついていたりと、汚れを最小限に抑える工夫はあるものの、便器の周りの汚れがひどく掃除が大変。男子中学生たちの意識を変えるために、用務員さんは色々とアイデアを考えます。

まず、男子中学生たちに、なぜトイレを大事に使わないのかを聞いてみます。すると、こんな答えが返ってきました。

「家のトイレは座ってしているから汚さない」

「学校のトイレは、家じゃないし、汚れていても気にならない」

どうやら、家のトイレに比べて、学校のトイレを大事に扱おうとしない意識が問題の背景にあるようです。以前、「トイレの神様」という曲もありましたが、トイレをきれいに扱うことを教えるのも学校の大切な役割かもしれません。そこで、用務員さんは、トイレにこのような張り紙を張ることにしました。

●トイレをきれいに扱いましょう

●家のトイレと同じように、大切に扱いましょう

●いつもきれいに使ってくれて、ありがとう

さて、男子中学生たちの意識は変わったでしょうか。残念ながら、あまり効果はなかったようです。意識を変えることで行動を変えるんだ、と考える人は多いですが、人の意識を変えることは本当に難しい。広告会社にいるからこそ分かるのですが、張り紙や言葉を少し見たぐらいでは、人の意識は変わりません。

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狙うは「行動したくなる」きっかけ作り