管理職への登用を強化するため、企業などが女性の「自信のなさ」を克服する対策を取り始めた。自分を過小評価し、挑戦意欲を持てない人が多いのが背景だ。研修やスキル向上で意識が変わる人も多い。
「自分なんて、管理職は無理」。第一生命保険の店舗で副店長を務める黒柳日出世さん(38)は1年前、漠然とした不安と自信のなさを抱えていた。今の職位は管理職一歩手前。向上心がないわけではないが「自分にできると思っていなかった」。それが「前向きに目指したい」に変わった。管理職手前の女性が対象の「次世代女性リーダー研修」を受講したのがきっかけだ。
1年間の研修は7人ほどのチームで人材育成などの課題に取り組んだ。セミナーや読書でヒントを得てはウェブ会議を開き意見交換した。他の人が「管理職って何、どうしたらいいんだろう」と不安を口にしたのを聞き、「みんな同じと分かり、ほっとした」。
部下への声のかけ方、上司に言われて嫌だったことなどを具体的に洗い出し、深掘りした。「経過も含めて具体的に褒められるとうれしいよね」など様々な意見が出た。意識して通常の業務で試すと、部下の反応も変わってきた。「周りを見る力がついた」と黒柳さんは手応えを得た。
同社が2015年に始めたこの研修には年100人前後が参加。効果も数字に表れている。19年度は、研修前に参加者の42.3%が管理職について「非常に不安」と回答していたが、1年の研修後には19.1%まで減った。
大和証券も女性の「自信のなさ」に着目した研修を行う。条件が合えば退職後10年以内なら同じ処遇で再雇用するなど働きやすくし、女性管理職は05年の60人から19年は436人まで増加。しかし「さらに上を目指したいという人が少ない」のが悩みだ。
同社の18年の社内調査で管理職を希望したのは、男性が9割以上に対し、女性は6割未満。管理職を望まない男性に多い理由が「現場の仕事がしたい」だが、女性は「自分には能力がないから」だった。そこで14年からは管理職手前の女性に対し、19年からは管理職の女性に対しキャリアアップ研修を用意。自信を深めた上での昇格を促す。