検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

在宅勤務は「残業代なし」いいの? 難しい時間で管理

比嘉邦彦東京工業大学環境・社会理工学院教授(上)

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

新型コロナウイルスの問題に直面し、多くの社員が初めてテレワークをせざるを得なくなった企業が相次いだ。企業はどんな課題に直面しているのか。問題が収束した後にこの経験をどう生かしていけばいいのか。「テレワーク」研究の第一人者である東京工業大学環境・社会理工学院の比嘉邦彦教授に聞いた。

少なくないネガティブな反応

白河桃子さん(以下敬称略) 新型コロナウイルス(以下コロナ)の影響で、企業が一斉にテレワークに対応する流れが加速し、3週間ほどが経過しました(3月下旬の取材時点)。日本のテレワーク導入に早期から関わってきた比嘉先生が、今の状況をどう見ていらっしゃるか。また、今すぐ手を着けるべき課題はなんなのか。ぜひ伺わせてください。

比嘉邦彦教授(以下敬称略) いろいろな声がすでに聞こえてきていますね。一つは、「やってみたら、案外できた」という声。日本企業でテレワークがなかなか進まなかった理由が「中間管理職の拒否反応」だったんですね。制度もできて、会社としても推奨していると言われるけれど、現場を取り仕切る上司がなかなか重い腰を上げない。それが今回のコロナ対策として、在宅勤務に本格的に取り組んでみると、「悪くない」という認識が芽生えて、一気にチーム全体に浸透したという。

一方で、ネガティブな反応も少なくありません。準備不足ゆえの不便があちこちで生じているようです。

白河 テレワークは食わず嫌いの人が多いのですが「やってみるとよかった」だけではなく、ネガティブな感情が芽生えてしまった人もいるんですね。

比嘉 自宅で仕事ができる環境を整えないまま在宅勤務に踏み切った場合、例えば、業務に必要な書類が電子化されていなかったり、電子化されていても社外からアクセスできなかったり。結果、ほとんど仕事が進まなくて「実質的な自宅待機だ」と嘆く人も。

これが長期化した場合、予想されるのは、なんとか仕事を進めたいワーカーが独自の工夫を始めることです。結果的に、データの外部持ち出しなどのセキュリティーリスクを高めることになるのではと危惧しています。ですから、会社側も今どのような不具合が起きているのか、本気で情報収集をして早急に分析・対処をしていくことが急務です。

白河 同感です。数週間が過ぎた段階で、データ収集をして課題と対策の発見につなげるべきですよね。ほかには、どんな声が聞こえてきていますか?

比嘉 家庭内のトラブルもよく聞かれますね。毎日出社している人が急に在宅勤務になったときに、まず奥さんが「お昼ご飯を余計に作らないといけない」とストレスがたまる。「家にいるんだから子守をしてよ」と言われて、在宅勤務のはずなのに「勤務」にならないというパターンも見られます。

これは数十年前に実証実験をやったときにも同じ問題が出てきて、要は在宅勤務に対する家庭の理解が浸透していない。某大手メーカーが在宅勤務制度を全社員向けに導入するにあたって、社長名で家族向けに「家にいても仕事をしていますので何卒ご協力ください」と理解を促す手紙を書いたと聞いたことがあります。それくらいのメッセージが必要なのかもしれません。

在宅勤務は「成果」で評価を

白河 リモートといっても在宅の場合、仕事と家庭のコンフリクト(対立)が起きる。リクルートの調査によると、在宅勤務を導入した場合、男性の家事時間は1日あたり平均31分ほど増えたそうです。自宅にいることで保育園のお迎えを担当しやすくなり、その流れで夕食から寝かしつけまでの育児や家事に関わるようになるのだとか。これは良い傾向だなと感じたのですが、一方で、「夫が外で働き、妻は家を守る」という昭和型役割分担が明確な家庭の場合は、男性は在宅勤務を嫌がります。なぜなら、「昼間の家は妻の城」ですので、非常になじみにくい。

この背景をよく理解している企業は、自宅以外の職場としてサテライトオフィスとしてのコワーキングスペースを契約して利用を促してきたわけですが、コロナの感染予防対策となると、コワーキングスペースも人が集まる場所となり得るので推奨しづらい。やはり在宅推奨となるわけです。共働き家庭においても、「夫婦2人で机を並べて仕事するのはやりづらい」という戸惑いも聞こえてきます。つまり、今、私たちは「家庭における、仕事と家庭の両立」という問題に社会全体で初めて直面しているんですね。

比嘉 特に首都圏で働く人たちは、誰もがそんなに広い家に住んでいるわけじゃない。小さな子どもがいる場合は、なおさら集中力を保つのが難しくなるでしょうね。私も昔、娘が2歳くらいの頃に在宅勤務を試みたときは、さんざんキーボードを触られましたよ(笑)。個人の事情に応じて集中できる仕事の仕方やメリハリの工夫ができる仕組みづくりが重要だと思います。このときに課題となるのが、評価の手法です。労働時間ではなく「成果」で評価する手法への転換が早急に求められています。

白河 おっしゃるとおりです。働き方改革の長時間労働是正はある程度進んできたのですが、依然として問題だったのが「効率よく早く仕事を終えた人ほど、残業代をもらえなくて収入が減る」という矛盾でした。残業削減とセットで進めるべきなのは「評価と報酬の再設計」だと私は考えてきましたが、テレワーク推進においても同じことが言えるということなのですね。

比嘉 同じだと思います。多くの企業が一斉にテレワークを実施して同じ課題にぶつかっている今こそ、評価法の改革も試行してみるべきではないでしょうか。重要なのは、「タスクのチケット化」という概念です。一つのタスクにどんなスキルと人数、時間が必要かを定義していき、そのタスクを完成させられるスキルを持つワーカーにアサインしていく。約束したアウトプットの質と納期さえ守ればよしというマネジメント法へと切り替えていけばいいんです。

白河 すると、「1日のいつ働くか、何時間働けばいいか」に縛られなくなりますね。

比嘉 はい。保育園の送り迎えとの時間調整も自由になり、ワーカーそれぞれの事情に合わせてスケジュールを立てられるようになる。出社を前提とした働き方と同様に、「○時から△時まで働いてください」と管理しようとすると、いろいろと不都合が生じます。

時間での管理は難しい

白河 なるほど。働く場所だけ自由でも時間はどうするかという問題もあります。テレワークは働く場所だけでなく時間の柔軟性を含めたものであるべき、ということですね。

比嘉 そうでなければ、テレワークによる本質的なメリットが生まれません。

大企業で散見されるのが「在宅勤務の場合は、残業をさせません」という姿勢なのですが、これはおかしいと私は思っています。その意図は、長時間労働を防ぐ労務管理が主目的なのですが、そもそも出社しない働き方を前提としたときに「時間で社員を管理する」というのは無理なんです。「18時以降はネットワークを切ります」とルール化したって、その時間より前にデータをダウンロードしてしまえば、業務は続行できますよね? ワーカーは自分がやりやすい時間帯で柔軟に時間を決めて仕事をするほうがはかどるはずです。

20年以上前のデンマークの調査で面白い報告があるんです。ある企業が在宅勤務を試行した結果、労働時間は長くなった。しかし、ワーカーの満足度は高くなった。理由は「働かされているのではなく、自主的に働いているから」というものだった。

白河 自由にスケジューリングしている自律性が満足のポイントだった、と。

比嘉 そうなんです。ワーカーが労働時間を自分自身でコントロールできていることも分かり、労働組合も納得して本格導入に踏み切ったそうです。テレワーク反対派の管理職には「見ていないとサボるだろう」という意見が多いのですが、評価さえしっかり行えば、大多数の人は一生懸命働くのではないかと私は思います。

見られていないからこそ成果を出そうと一生懸命働いた結果、長時間労働になりやすくなる。サービス残業はむしろ増えるんです。ですから、「在宅勤務になったんだから、残業代はなしよ」という企業側の論理は成り立ちません。

例えば今後、コロナ問題が収束した後、「今後もテレワークを継続しましょう。その分、オフィスは縮小しましょう」と決定する企業はきっとたくさん出てくると思います。オフィス縮小は大幅なコスト削減につながります。企業にとってはコストが浮いてメリットが出ているのに、さらに残業代も削減するとなれば、シワ寄せはワーカーに行ってしまう。

企業がテレワークによって恩恵を受けた分は、在宅勤務手当なりボーナス還元なりで、ワーカーに返していくべきだと私は思います。実際、日本テレワーク協会が選出する受賞企業には、そういった取り組みを行う企業が出始めています。

白河 たしかに、オフィス投資の削減というのは、経営指標に直接跳ね返ってくる大きなインパクトがありますよね。完全テレワークになって、オフィスの席を8割まで減らしたり、東京駅前のオフィスを4フロアから3フロアにしたり、という事例を見てきました。毎月高額な家賃だけに大きいです。

比嘉 おっしゃるとおりです。テレワークを経営戦略として取り入れるなら「生産性向上」を目的にしないほうがいい。生産性は当初はトントン、長期的に見て上がればいいというくらいの期待で。むしろ確実に獲得できるメリットとなるのは「コスト削減」です。テレワーク導入のための投資をして、2~3年かけて回収していくプランは成功しますよ。

(明日はテレワーク時の職場のコミュニケーションなどについてお聞きします)

白河桃子
 少子化ジャーナリスト・作家。相模女子大客員教授。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員。東京生まれ、慶応義塾大学卒。著書に「妊活バイブル」(共著)、「『産む』と『働く』の教科書」(共著)、「御社の働き方改革、ここが間違ってます!残業削減で伸びるすごい会社」(PHP新書)など。「仕事、結婚、出産、学生のためのライフプラン講座」を大学等で行っている。最新刊は「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)。

(文:宮本恵理子、写真:吉村永)

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
画面例: 日経電子版 紙面ビューアのハイライト機能
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_