「服装哲学、アップルのジョブズに学んだ」原田泳幸氏ゴンチャジャパン社長 原田泳幸氏(下)

「1990年、40歳のときにアップルに入りました。当時の日本なら職業不明みたいに思われる格好で。いいおじさんなのにTシャツにジャケットを着て、ヘッドセットのマイクを付けて登壇して。いま考えてもぞっとするね。こういうスタイルでプレゼンする日本人経営者が増えていますが、よくない。日本人にはやっぱり似合わないよなぁ」

スーツよりもカジュアルの方がお金がかかる

――原田さんの当時のスタイルは、いまのIT企業で働く人たちの服装の走りといえますね。

「でもね、Tシャツにジャケットといっても、Tシャツはアルマーニだったり、ジャケットは肩パッドがないラフなものだったり。結局、スーツよりもカジュアルの方がお金がかかる、と気づきました。あのころはまだ若くて、グッチ、プラダ、ルイ・ヴィトンを着ていた。でも、こうしたブランドの服にも似合う年齢というものがあって、50歳を過ぎるとだめ」

――ジョブズさん以外のアップルのメンバーはどんなスタイルでしたか。

「ティム・クック(現CEO)はジョルジオ・アルマーニが多かったな。彼の細身の体形とソフトな物腰は、線が柔らかいアルマーニとマッチします。仕事ぶりは重箱の隅をつつくくらい細かいですけどね。あと、Tシャツ1枚着ているだけでもおしゃれだなぁと思ったのが、19年に退社したジョナサン・アイブ(最高デザイン責任者=CDO)。私が米本社に勤務していた46歳くらいの時、彼と結構仲がよくて。サンフランシスコのグッチでときどき、ばったり会いました。彼は服もシンプル、作っているモノもシンプル。彼のアイデンティティーそのものでした」

ボッテガ・ヴェネタのかばんにはトゥミのキーを付けた。「クロークに預けても安心」

――服装の哲学はその人の創造物にも反映するものです。

「ですから右にならえではなく、個性が大切なんです。アメリカではさまざまな国籍の友人ができました。インド人の親友はいつもターバンを巻いていますし、アフリカンは原色がものすごく映える。彼らはみな、個性を持っています。その人が着るとかっこいいけど、ほかの人がそれを着たらおかしく見えるほど、装いを自分のものにしています」

――職場でカジュアル化が進んでいます。カジュアルスタイルではどんなモノを求めますか。

「いいもので、これ見よがしではないもの。50歳を過ぎてからはロロ・ピアーナやブリオーニなどを着るようになりました。あと、よく買うのがジョゼフ・オムとマルタン・マルジェラ。マルジェラは『パパを変身させる』と娘に連れて行かれて、全身買ってみたのがきっかけです。あと革の素材に引かれてロエベやボッテガ・ヴェネタのブルゾンが好きになりました。仕事では5年ほど前に買ったボッテガのかばんを使っていますが、これも素材のよさとデザインが気に入っています。しゃべっていて気がついたけど、あれこれたくさん持っているんだね」

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