オリックスのシニア・チェアマン、宮内義彦氏は、新しい金融手法であったリース業を日本に根付かせ、オリックスをグローバル企業に育て上げたほか、政府の規制改革会議の議長として「日本の不合理な規制」にも切り込んできた。80歳を超えた今も社会への鋭い提言は健在だ。東京大学在学中の上野匠海さんがインタビューした。
上野 僕は高校時代にダンスにのめり込み、ダンスで生きていこうといったん決めたのですが、「大学は出ておいたほうがいい」と周囲から説得され、受験勉強を頑張って1浪して東大に入りました。ダンスの道はまだあきらめていないので、休学してダンス留学をしたいとも考えています。でも両親には反対されてしまっており、ものすごく迷っています。
宮内 ダンス? 面白いね。プロとしてご飯を食べていけるレベルになって、やり通せるかを考えてみるといいのではないでしょうか。体を使うアスリート系の職業は、どうしてもまだ若いうちに年齢的なピークが来る。オリックス・バファローズでプロ野球の選手をずいぶん見てきているからよくわかります。あのイチロー選手だって、50歳まで現役を続けたいと言っていたけれど、結果的に45歳で引退した。それも体のメンテナンスに非常に気を遣い、並々ならぬ努力があってのことです。早い人だと22、23歳くらいで戦力外通告を受ける人もいるわけです。
僕はまず、どちらの道で生きていくかを決めるべきだと思います。心の片隅で「あれをやっておけばよかった」と後悔しながらほかのことをするのは、気持ちが中途半端になってよくありません。もちろん、決めたらその先にバラ色の未来が待っているとは限らず、決めた後でまた迷うこともあるでしょう。間違ったなと思うこともある。それが人生。でも、とにかくまずは「こっちにいこう」と決める。どっちつかずでいると、両方とも「アウト」になるでしょうね。天下のダンサーになろうと決めるなら、今を逃したらダンサーにはなれない。それは自分で決めないといけない。