日経ナショナル ジオグラフィック社

現在、米国でも新型コロナウイルスが拡散しつつある。そしてそこは、人種的・民族的少数者や農村部の市町村などが、すでに深刻な医療格差の犠牲となっている国だ。

ワシントン州シアトルの大学地区にあるフードバンクの入り口には、現在、手洗い所が設置されている。このフードバンクは毎週約1300家族に食料を提供してきた。責任者のジョー・グルーバー氏によると、コロナウイルス危機が始まってからも、訪れる人が減っている様子はないという。

しかし、フードバンクで働くボランティアの約3人に1人は高齢者であり、自分の健康を守るためにシフトを抜けることを選んだスタッフもいる。

「わたしたちは、社会的な立場が弱いたくさんの人々と繋がっています。通常のサービスをできるだけ長く維持するにはどうしたらよいかを考えることは、非常に重要です」と、グルーバー氏は言う。

シアトルでは、ホームレスの人々が特に大きな懸念事項となっている。米国にとって新型コロナウイルスの被害が最も深刻な地域であるだけでなく、ホームレスの人口が最も多い街のひとつでもあるからだ。シアトルに1万1200人存在するホームレスの大半は屋外で寝起きしている。そして彼らの多くが高齢者や、慢性的な健康問題を抱えている人々だ。

「ホームレス状態にある人が、自分の健康を管理することは不可能です。通常の状況であってもそうなのですから、感染症が流行すればひとたまりもありません」。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校社会的弱者センターの責任者で、医学教授のマーゴット・クシェル氏はそう語る。

カナダでSARSが流行した際、ホームレス支援機関は、清潔で安全な日用品を確保するのに苦労した。明確な衛生ガイドラインもなかった。すでにSARSの主要な症状が複数現れている人も多く、スクリーニング検査は一筋縄ではいかなかった。病気になったホームレスの人たちをどこへ、どのように隔離すればいいのかもわからなかった。

感染症は「不平等のリトマス試験紙のようなもの」だと、米ミシガン大学の疫学の助教、ジョン・ゼルナー氏は述べている。

(文 AVIVA HOPE RUTKIN、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2020年3月18日付の記事を再構成]