あらゆる情報が瞬時に拡散するネット時代。記者会見に臨む経営者の姿も時に膨大な視線にさらされ、その挙措や言動が企業イメージを大きく揺さぶることもある。第一印象も重要とあって、各人各様の流儀で身なりを整える。そこで、実際にしびれるような現場を体験した当人に、当時の装いのワケを聞いてみた。アップルコンピュータ(現アップルジャパン)、日本マクドナルドホールディングス(HD)、ベネッセHDの社長を歴任し、2019年12月に台湾茶カフェ、ゴンチャジャパン会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)に就任した原田泳幸さんだ。トップの服装も企業ブランドであると言い切る原田さんは「記者会見では目的によって服装を考え抜いてきた」と打ち明けた。(この記事の〈下〉は「『服装哲学、アップルのジョブズに学んだ』原田泳幸氏」)
トップの服装はブランドイメージと密接に関わっている
――原田さんは服装には人一倍、気を使われると聞いています。いつもびしっとスーツを着こなしているイメージがありますが、どこで作られているのですか。
「カチッとしたスーツは英国屋で作りますし、おしゃれっぽいスーツなら表参道にあるマルキースのテーラー、佐々木康雄さんに仕立ててもらいます。テーラーの服は体の動きがめちゃくちゃ楽ですよ。50万~70万円ほどするときもありますが、長持ちするからそう高くはありません。シャツで一番多く作っているのは銀座にある大和屋シャツ店です。コストパフォーマンスが高いと感じる服はポール・スチュアートですね。靴はベルルッティが多いです。木型が合うんです」
「ただ、以前とは着るものがずいぶん変わってきました。今日もファッションの取材だから英国屋のスーツを着ようかと一瞬考えましたが、やばい、違うな、と引っ込めました」
――ゴンチャジャパン社長になられて装いがどう変わったのですか。
「ゴンチャに来てからはなるべく高いものは着ないようにしているんです。一目で高級ブランドだと分かるものは選びませんし、靴やかばんもロゴが目立つものは身につけません。心がけているのは、いかに楽に仕事ができるか、ということです。今日はネクタイを締めなくていいよな、今日はセーターでいけるな、という日はカジュアルを選びます。いま着ているジャケットは大丸松坂屋のPB(プライベートブランド)のトロージャン、シャツはランバン、パンツは(通販の)ランズエンド。トロージャンは日本人の体形が考えられていて、お直しいらずです。コートはデサント。めっちゃ軽くて、しわにならず、寒いときにバッテリーで温まるヒーター機能が付いたハイテクコートなんです」

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