いつも前向き、転機つかむ キャサリン・ポラードさん国連事務次長(折れないキャリア)

中南米ガイアナで育った。「識字率は99%と高く、先進的な教育を受けた」という。ジャマイカの大学を卒業し、米監査法人デロイトの現地オフィスに就職した。6年半がすぎるころ「国際的な仕事がしたい」との思いが募った。

西インド諸島大学キングストン校修士(会計学)。総会・会議管理担当事務次長を経て、2019年9月から現職。

転機は自らつかんだ。国連機関に職を求める手紙を送り続け、1年後にはニューヨークの国連開発計画本部で面接に臨んでいた。幸いにも仕事を得たものの、わずか1年の契約だった。家族や友人は「今の仕事を捨てるなんて」と将来を心配したが、「井の中の蛙(かわず)にはなりたくない」と米国へ飛び出した。

それから30年、国連一筋でキャリアを積み重ねてきた。主に予算や財務、総務、人的資源などを担当し、国連の事務局や平和維持活動局、国連ボランティア計画などで順調に出世の階段を上っていった。2019年9月、管理・政策・コンプライアンス担当事務次長に就任した。

「前向きな姿勢を忘れない」がモットーだ。課長時代、新しい財務システムの職場への導入を任された。本部から担当者が来て教えてくれるのかと思ったら、上司は「君は優秀だから助けは不要だろう」。驚きを通り越して孤独感すら感じたが、状況は変わらない。「信頼されているからこそ任された」と自分を奮い立て、9カ月でシステム移行をやり遂げた。

壁にぶつかったこともある。一番つらかったのは、事務次長補として人事などの改革を手がけた時だ。加盟国間で利害が対立し、組織内部の抵抗にも遭った。

人は事実ではなく自分の視点から見た現実に基づいて判断し、不合理な選択をする傾向がある。そう考え、まず対話に本腰を入れた。関心や懸念に耳を傾けて情報を共有するうち、少しずつ溝は埋まっていった。

未婚で子供はいない。「キャリアの曲がり角に来る度に仕事を第一に考えて決断してきた」。一方で「私の人生はそうだったというだけ」とも話す。育児や介護といった家族への責任を負う同僚や部下には支援を惜しまない。「家のことが心配では効率的に働けない」

今年は国連創設から75周年に当たる。男女平等や多様性、メンタルヘルスなど様々な分野で改革を推進する予定だ。「これまでに学んだ教訓を生かしたい」と意気込む。

(編集委員 高橋香織)

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