ユーチューブ 大人にはわからない「空気感」のヒミツ学生消費 裏からみると…(3)

常見陽平(千葉商科大学准教授)

常見陽平(千葉商科大学准教授)

テレビ番組風ではうけない

なぜ、年代が若いほどネット動画を見る傾向が鮮明なのだろうか。「僕の世代は小中学生の頃からずっとユーチューブをファンとして見ていて、空気感が分かるんです」とすのはら氏は説明する。「生まれたときからネットがあり、青春時代をユーチューブと育ってきていて、大人にはわからない空気感がある」という。

「空気感」という言葉の通り、ユーチューブ特有の「何か」を誰にでもわかるような言葉にするのは難しいようだ。「なんとなくその空気感がわかるんですよね……」。

先ほど、いまやユーチューブは様々なプロがあつまってつくりだす世界になったと書いた。それと矛盾するようだが、ユーチューブでは、いかにも完成度の高いテレビ番組風のものをつくっても、なかなかウケないのだ。スマートフォンで毎日見るうちに、視聴者にとってユーチューバーは普段から会っている「友達」のように存在になってくる。コメント欄でやりとりさえできる。テレビとの違いは絶妙な距離感であり、これが難しい。

ファンはアクティブだ。オフ会を開くと、ユーチューバーによっては数千人があっという間に集まることもある。それも、スターが壇上から語るというスタイルではなく、一緒に交流するというスタイルが好まれる。

写真はイメージ=PIXTA

一方で、この距離感をきちんと維持できないと、ファンとの関係も構築できない。企業がチャンネルを立ち上げたときに陥りがちな失敗の芽は、ファンと出演者(=ユーチューバー)の距離感にあると言えよう。

距離感が近いゆえに、うまくいかないスパイラルに陥ることもあるという。「なんかいつもと違う」というコメントが視聴者から書き込まれることさえある。すのはら氏によると、そのようなときはユーチューバー本人が乗り気ではないという。このような少しの変化を読み取ってしまうのが、ユーチューブの視聴者の特徴である。

得意分野に対する本人の熱量がそのまま空気感としてコンテンツに現れるのが、ユーチューブの特徴だ。有名になりたい、お金持ちになりたい……。ユーチューバーになろうという動機は様々だろう。しかし、すのはら氏は強調する。「結局、好きかどうか、そしてやる気があるかどうかなんです」。そしてすのはら氏のような「黒子役」がタレントであるユーチューバーをそっと後押しし、U22世代の耳目を集めていくのである。

常見陽平(つねみ・ようへい)
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。リクルート、バンダイ、クオリティ・オブ・ライフ、フリーランス活動を経て、千葉商科大学国際教養学部准教授。専攻は労働社会学。働き方をテーマに執筆、講演に没頭中。
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