この状況を打開するヒントが、健康機器大手タニタ(東京・板橋)の取り組みです。体組成計や食堂などでおなじみの会社ですが、率先して大胆な働き方改革を実施している健康経営企業でもあります。

タニタはなんと、副業推進よりさらに踏み込み、希望する社員にはタニタの仕事を続けながらフリーランス(個人事業主)として独立することを支援しているそうです。フリーランスになれば、それこそ時間も場所も制約なく働けるので自由度は格段にあがります。また、経費計上枠も増えるので、実質手取りが増えることもあります。

独立するにあたって不安なのは、仕事が受注できるかということと、社会保障が心もとない点です。この点もタニタではサポートしています。

タニタの谷田千里社長は社員が個人事業主として独立するのを支援する

会社から見ると支払いコストはほぼ変わらないですし、自由に働きたい社員にはこれ以上ない制度。そして、スキルアップのための費用はフリーランスであれば経費化できるので、成長したいと思っている人にはもってこいでしょう。もちろん、従業員の社員化には偽装請負にならないかなど、慎重に検討すべき課題があることも事実です。しかし、自身の専門性を活かしながら様々な形で社会に貢献していきたい、独立してがんばりたいという方には良い制度だと思います。

もちろん、住宅ローンや各種制度がまだまだ「正社員」前提で構成されているのも事実です。実際には、全労働者のうちフリーランスは5%、37.9%は非正規社員です(総務省「2018年労働力調査」)。これらの状況からも、国としての法整備、社会保障の改革は待ったなしだと思います。

社会でどんな価値を発揮できるか

自分のキャリア戦略を考える上で大事なことは、まずは「総合職」中心の考え方が終わり「専門職」という働き方の時代がくることを理解することです。そして、自分が社会の中でどういうバリューを出していけるのかということを意識していかなければなりませんし、そこに自分の思いなども反映させていく必要もあります。

私自身、エンジニアからキャリアをスタートさせ、ディレクターとしての立場を経て経営へと、キャリアチェンジしながらここまで進んできています。経営者としてものづくりの現場経験があることは私の強みですし、結果的には理想的なキャリアを積み重ねてくることができたと思います。しかし、私自身、すべて戦略どおりというわけではありません。与えられた環境の中で、自分がどういうバリューを出せるか、それを常に考えていました。キャリア戦略では、自分の戦略を現場でどう実現していくかを考えていくことが大切なのです。

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村上臣
青学大理工卒。在学中に電脳隊を設立。経営統合した携帯電話向けソフト開発、ピー・アイ・エムとヤフーとの合併に伴い、2000年ヤフー入社。ソフトバンク(当時)による買収に伴い06年、英ボーダフォン日本法人出向。11年ヤフー退社、12年同社復帰、執行役員チーフ・モバイル・オフィサー(CMO)。17年リンクトイン・ジャパン代表。

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