お笑いのミルクボーイ 8分で人生がこうも変わるとは

2019年12月に開催された漫才日本一決定戦「M-1グランプリ2019」で、初の決勝進出にして王者に輝き、旋風を巻き起こしたのがこの2人。ダブルの緑スーツに身を包んだ角刈りの内海と、着衣のままでもはちきれんばかりの筋肉を隠せない駒場によるコンビ、ミルクボーイだ。

ミルクボーイ 左/駒場孝、1986年2月5日生まれ、大阪府出身。右/内海崇、1985年12月9日生まれ、兵庫県出身。吉本興業所属

M-1決勝戦の1本目に披露したのは、朝ごはんの名前を忘れたという駒場の“オカン”のために、内海が一緒に考えようと特徴を聞き出していくネタ。駒場が説明するたびに内海が「その特徴は完全にコーンフレークやないか!」「ほなコーンフレークちゃうかぁ」と肯定したり否定したりを繰り返していくうちに笑いが増幅し、終わってみれば審査員7人体制ではM-1史上最高得点の681点を叩き出した。

審査員の松本人志が「これぞ漫才」と絶賛した1本目に続き、もなかを題材にした2本目のネタでもスタジオを沸かせ、見事チャンピオンに。これまで知名度が低かった2人は、優勝後の反響について「M-1で街の反応も全部引っ繰り返った」(内海)、「4分の漫才を2回。8分で人生がこんなに変わるなんて」(駒場)と語った。

出会いは大阪芸術大学の落語研究会。高校時代に、吉本興業主催の「M-1甲子園」に出場したことがある内海と、同じく高校時代からネタを書いていた駒場が意気投合してコンビを組んだ。実力はピカイチで、彼らの漫才を見て、「キングオブコント」ファイナリストの経験がある、ななまがりや空気階段の鈴木もぐらが後輩として同じサークルに入ったほど。2人は学生ながら2007年に吉本興業のオーディションに合格し、以降、大阪の劇場を中心に活動してきた。

だが、M-1優勝に至るまでの道のりは決して平坦なものではなかったという。「10年頃から5年ぐらい暗黒時代があるんです。僕はギャンブルにうつつを抜かしてしまって……」と内海が明かすと、駒場も「僕は先輩に遊んでもらって、週に6日ぐらい淡路島に行ってバーベキューしてました(笑)」と語る。「M-1に出たくて漫才をやっていたから、10年にその大会がなくなったことで目標が持てなくなって。再開まで何年間もサボってしまった」(内海)のだという。

再び2人のやる気に火をつけたのは、先輩芸人の海原やすよともこだった。「15年頃に、お世話になっていたやすともさんが『昔は面白かったって、後輩から聞くよ。男同士だとそういう話はしないと思うけど』と言ってくださったんです。ほんまに恥ずかしかったし、目が覚めました」(駒場)。

そこからは心を入れ替えて衣装も現在のスーツに一新。17年からは後輩の金属バット、デルマパンゲ、ツートライブを交えたライブ「漫才ブーム」を定期的に主催してきた。「ここで2カ月に1回、3本新ネタを下ろすんです。自分らがトリで終わるイベントだから、スベられへん。そうやって精神的にも追い込んできました」(内海)。

こうした努力が実り、悲願のM-1優勝を果たした2人。これからやっていきたいことを尋ねると、「まだまだ漫才が完成したとは思っていないんで、もっと磨いていきたい」(駒場)、「大阪だけでなく、これからは東京や全国でも漫才をやっていけたら。とにかく劇場に来てください」(内海)と声をそろえる。今後も変わらず漫才を中心に活動していくそうだ。

(日経エンタテインメント!3月号の記事を再構成 文/遠藤敏文 写真/中村嘉昭)

[日経MJ2020年3月27日付]

エンタメ!連載記事一覧
注目記事
エンタメ!連載記事一覧