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2020/4/6
「桜鯛山吹焼き」はサクラダイの身のうま味と皮の香ばしさが絶品

八寸の後はお造り、焼き物の「桜鯛(サクラダイ)山吹焼き」と続く。鮮やかな黄色の衣をまとったサクラダイが、春の若葉のように透明感のあるグリーンの織部焼の平皿にのって登場すると、その美しさに思わず息をのむ。テーブルの上に突然、山吹の花が咲き乱れる春の野山があらわれたようだ。

串を打ち、備長炭で焼き上げたサクラダイに、玉素(たまもと・卵黄に米油、薄口しょうゆと塩で調味したマヨネーズのようなソース)をかけて、上火(上部から火をあてること)でさらに焼く。これは「素焼き(もとやき)」といい、日本料理では昔からある焼き物の調理方法の一つだ。

玉素を塗ったサクラダイに上から炭をあててゆっくり焼き、柔らかな上火で玉素が固まらない程度に火を通す。

焼きあがると上に、酒、塩、昆布だしで味をつけた卵を湯せんでじっくり火を通し、細かくそぼろ状にしたいり卵をトッピング。

サクラダイの身は内側からはじけそうにジューシーで、香ばしい皮目はほのかに炭の香りをまとっている。そのサクラダイに、繊細な火加減でプリッとした食感に仕上げた玉素と、春霞(はるがすみ)のように細かくふわふわに仕上げたいり卵がからむ。サクラダイのうま味と卵の甘み、繊細な食感が融合し、目でも舌でも春を感じさせてくれる驚きのひと品だ。

揚げ物は「帆立と雲丹(ウニ)の磯辺揚げ」

揚げ物は半分にスライスしたホタテにウニをはさみ、海苔(のり)で巻いて揚げたもの。ホタテは口に入れた瞬間に溶けていくような軟らかさで、後からウニに閉じ込められた磯の香りが口いっぱいに広がる。

それと対照的なあしらいの山菜、タラの芽とウドのほろ苦さと甘み。ひと皿で春の海と春の山野のおいしさを感じさせてくれる。

この後に煮物「眼張(メバル)おろし煮、筍(タケノコ)、蕗」、ご飯「青柳とクレソンの土鍋ご飯」、甘味「苺(いちご)ソルベ」でコース終了。高級和食店にもひけをとらない内容でありながら、5000円という破格の価格設定であることにあらためて驚く。

「今の和食店は低価格の居酒屋と高級店の二極化が多く見受けられます。でも、いい器でおいしい和食を食べて5000円くらいのコースなら、気軽に通っていただけるのではないか。居心地のいい空間で気楽に本物の良さを味わえるような、自分達が行きたいと思う店を作りたかったのです」(音成さん)

そんな願いをかなえるように、同店は連日、食を心から楽しむさまざまな客でにぎわっている。宣伝らしいことは何ひとつしていないのに、クチコミで日ごとに常連が増えているとのことで、浅草という土地のコミュニティー力の強さ、食への関心の高さをあらためて感じる。

「今後は浅草に少しずつ根を張って、細く長く愛されるお店をめざしたいですね。そして自分とお店を少しずつ成長させていけたら、と思います」(音成さん)

<メニュー>

おまかせコース 5500円 ※価格は税込み。

こへると
住所:東京都台東区浅草3-9-10 キャピタルプラザ浅草1F
電話:050-3476-0038
営業時間 18:00~24:00(L.O.23:00)
定休日 水曜
※上記は取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。

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