「ケイジャンのマルディグラは権力構造をからかい、揺さぶり、世間の人々を楽しませようというものです」と話すのは、ケイジャン文化を研究する民俗学者のバリー・ジーン・アンスレット博士だ。「祭りが刺激となって、この日でなければ、あるいは仮面がなければありえないレベルの創造性が生まれることに、いつも驚かされます」

クリルの出発前、ケイジャンの伝統音楽を奏でる演奏家たち(PHOTOGRAPH BY CLAIRE BANGSER)

ニワトリを捕まえろ

クリル・ド・マルディグラでは「キャピテン」が任命され、伝統のお祭り騒ぎを先導し、新顔を迎え入れる。参加者はみな衣装を着ており、傍観することは許されない。コース沿いの家々で食べ物を熱烈にねだるときは全員参加。ルールを破ると、仮面をつけてむちを持ったレ・ビレンやラ・フォルスと呼ばれる男女からの陽気なお仕置きもある。

「ラ・ビエーユ・シャンソン・ド・マルディ・グラ」(祭りの目的を知らせる役目もある古い歌)の力強い演奏に続き、おどけたマルディグラたちが草原をにぎやかに進んでいく。

数時間後、参加者は休憩し、ケイジャン料理のブーダンというソーセージを食べる。草の上で軽食を取る人もいるが、ニワトリを奪い合うイベントに参加する人もいる。油を塗った7メートルほどの棒の先に板がついていて、その上にニワトリがのっている。

先を争ってこの棒によじ登る人の山は、まるで人間ピラミッドだ。大勢の人が脱落する中、何とか上まで登った参加者が、空中で誇らしげにニワトリを振る。サボイ氏らの祭りではこのニワトリは無傷で解放されるが、もともとはニワトリを調理するのが伝統で、他の祭りではルイジアナ料理ガンボ(シチュー)の材料にすることもある。

クリルの途中、ダンスに興じるマルディグラの参加者(PHOTOGRAPH BY CLAIRE BANGSER)

クリル・ド・マルディグラは騒々しいかもしれないが、決して分別のない行為ではない。ケイジャンの文化とコミュニティーをたたえるものだ。ファキティーグの競走では、ケイジャンの伝説的ミュージシャン、デニス・マギーの墓で参加者が足を止めて敬意を表する。人々の精神的なつながりを最も感じられるときだ。例年、午後2時ごろには騒ぎも収まり、サボイ氏の敷地で、音楽と濃厚なガンボの大鍋が迎えてくれる。

次ページでも、仮装して祭りを楽しむ人々の様子を写真で紹介しよう。

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