在宅でカフェ接客、買い物も アバターロボット広がる

舘さんは「VR技術や通信技術などの進展で、実社会で使えるアバターロボットの姿が見えてきた。課題は人間の手のように動くロボットハンドの実現」といいます。遠隔診療や高齢者見守りなど、アバターロボットの活躍の場は拡大しそうです。

舘暲・東京大学名誉教授「2050年ごろには社会に定着」

アバターロボットは今後どのような形で広がるのか。本格的な普及に向けた課題は何か。アバターロボットの原型となるテレイグジスタンス(遠隔存在)の概念を1980年代に初めて提唱し、様々なアバタータイプのロボットを研究してきた舘暲・東京大学名誉教授に聞きました。

――日本でのアバターロボットの普及の様子をどう見ていますか。

東京大学の舘暲名誉教授

「アバターロボットを手がけるスタートアップがこの2、3年次々に誕生し、ビジネスのイメージが見えてきた。2017年創業のテレイグジスタンス(東京・港)は、コンビニエンスストアの陳列作業にアバターロボットを使う準備を進めている。無人店舗が今後増えるとされるが、商品陳列などの作業にはまだ人手がいる。こうした作業を遠隔地からロボットを操作して行う。アバターを使えば、1人の操作者が、複数の店で順番に作業するというオペレーションも可能になる。店ごとに従業員に作業手順を教える必要がなくなるといった利点も生まれる」

「既存の有力企業の中にも、アバターロボットの可能性に注目するところが出ている。トヨタ自動車が開発したヒューマノイドロボットは、ヘッドマウントディスプレー(HMD)などウエアラブルな装置をつけた人がコックピットに座った状態で操作する。日本製鉄グループは、工場での作業などを想定してアバターロボットを開発している。ANAホールディングス(HD)は、頭部がタブレット端末で移動できるアバターを昨年発表した。観光・商業施設や病院など様々な場所に設置して、利用者がこのアバターにログインすることでその場所に瞬間移動するというコンセプトをうたっている」

――アバターロボットの普及に向けた研究開発も進んでいますか。

「国内外でプロジェクトが動いている。宇宙開発や深海探査などの技術コンテストで有名な米国のXプライズ財団が、アバターロボットをテーマに技術コンテストを開く。スポンサーはANAHDだ。日本の14チームを含む世界19カ国の計77チームが21年に開かれる予選に臨み、22年に決勝戦が行われる予定だ。また、最近計画が固まった政府の大型研究プロジェクトであるムーンショット型研究開発制度では、量子コンピューターなどと並んでサイバネティック・アバターというテーマが選ばれた。人の代理となるアバターロボットを通じて、人間の能力の拡張も狙ったものであり、テレイグジスタンスとほぼ同じ概念だ。ムーンショット型研究は50年ごろの普及を見据えている」

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