全身真っ白なキリン、2頭殺される 残る1頭は

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

アフリカのケニアで確認されていた、とても珍しい真っ白な3頭のキリン――そのうちの2頭が命を奪われた。2020年3月10日、現地の野生生物保護当局が声明を発表。ケニア北東部イジャラの自然保護区で、真っ白なメスのキリンと生後7カ月の子が「武装した密猟者に殺され、白骨化した状態で」見つかったことが明らかになった。殺されたのは4カ月前と推定され、死亡したメスの子である3頭目の若いオスは生存していると考えられている。

イシャクビニ・ヒロラ自然保護区の責任者モハメド・アフメドノール氏は声明の中で、「イジャラのコミュニティとケニア全体にとって、とても悲しい日になりました」と述べている。

3頭の白いキリンは2017年、パトロール中のレンジャーによって発見された。レンジャーたちはYouTubeに動画を投稿し、動画は口コミでまたたく間に広まった。動画のコメント欄には当時、白いキリンたちは世界中に知られたことで、密猟のリスクにさらされるかもしれないという懸念も書き込まれていた。

今回の悲劇は、簡単に自然とつながれるという、デジタル時代がはらむ矛盾を浮き彫りにしたとも言える。人々はソーシャルメディアのおかげで、世界中の希少な生き物たちを身近に知ることができるようになった。多くの生物が絶滅の危機に瀕する今、こうしたつながりは貴重だ。

その半面、ソーシャルメディアが原因で、動物たちのリスクが増大したことも事実だ。希少性や独占性は、野生生物の違法取引の動機となるから、珍しい動物が密猟者に狙われる可能性が高いことは想像に難くない。

現在、動画のコメント欄は追悼の場に変わり、たくさんの人の悲しみや密猟者への怒りが書き込まれている。動画が投稿され拡散した結果、白いキリンたちは標的にされたのかもしれないという指摘も見られる。

「忘れられないほど美しい。この世界は魅力に満ちています」という2年前のコメントの下には、3月11日朝に書き込まれたばかりのコメントが続いていた。「とても悲しい。私には理解できません。いったい、なぜ?」

2017年、多くのメディアがこの希少なキリンについて報じた。ナショナル ジオグラフィックもその一つだ。珍しい野生動物についてどのように報じれば、密猟者に手を貸すことにつながらないのだろうか。野生生物犯罪について報じるとき、私たちは細心の注意をはらって、具体的な場所を明かさないようにしている。

3頭のキリンたちは「白変種(リューシズム)」と呼ばれる遺伝子疾患の可能性が高い。皮膚細胞による色素の合成が阻害される疾患で、ほかの器官や組織は色素を作れるため、瞳は暗い色をしている。これが、すべての組織で色素を合成できないアルビニズムとは違う点だ。皮膚の細胞は色素を作ることができないが、白変種の個体が遺伝的に生存に不利ということはない。

希少な美しさの理由

白変種は珍しいが、前例がないわけではない。タンザニアのタランギーレ国立公園でも、白変種のキリンの子供が確認されている。タランギーレ国立公園は白いキリンの誕生後、密猟者から守るための対策を講じていると発表した。一方、イシャクビニ・ヒロラ自然保護区は安全対策に言及していない。

キリンは世界的に脅威にさらされている。国際自然保護連合(IUCN)によれば、この30年で個体数が40%以上も減少し、現在は1万6000頭を下回っているという。皮、肉、骨、尾を得るための密猟はアフリカ全土で増加している。また人口が増加し、人が自然へと進出した結果、作物被害に対する報復、自動車事故、狩猟等によって、キリンの命が奪われるケースは増えている。

(文 NATASHA DALY、訳 米井香織、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年3月13日付]

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