日経ナショナル ジオグラフィック社

こうした大胆な冒険家もいたとはいえ、大多数の飼いネコは、オセロットのような野生のネコ科動物や野良ネコよりも、はるかに行動範囲が狭いことがわかった。理由は明らかだろう。家でエサをもらうので、食べ物を探しに遠くまで探検をする必要がないからだ。また、多くのペットは去勢または避妊手術を受けているので、交尾相手を探す欲求もない。

「食べ物や交尾という動機がないために、ほとんどの飼いネコは自宅の近くで満足のようです」。ケイズ氏はそう話す。

研究者たちは、国によってネコの行動に違いがあるのではないかと予想していた。例えば、米国ではコヨーテが広く生息しているので、ネコは安全な場所からあまり離れないのではないかと推測された。ところが、実際にはどの国でも、ネコはたいてい自宅の近くで過ごしていた。ただ、オーストラリアのネコの行動範囲は、他の国々よりも小さかった。「ネコは世界中どこにいてもなまけ者なんです」とケイズ氏は結論づけた。

他にも、オスの方がメスよりも行動範囲が広いことがわかった。また、去勢や避妊手術を受けていないネコの方が受けているネコよりも、若いネコのほうが老齢のネコよりも、そして地方のネコの方が都市部のネコよりも広い範囲を移動する傾向があった。

外出先でハンターに

近年、ネコが爬虫類や鳥類などの野生生物を減らすことに対して、懸念が高まっている。GPSのデータは、ネコがどれくらい遠くまで行っているかだけでなく、どんな場所を訪れているかを知る上でも役立つ。

国を問わず、約75%のネコはほとんどの時間を、人の手が入った庭などの場所で過ごしていた。一見すると、これは良いことのように思える。テラスと花壇で過ごしているだけのベラちゃんが、どんな問題を起こすというのだろう。

しかし、狩りが特定のエリアで集中して行われることで、地域の野生生物の生息数に桁外れの影響が及ぶ可能性があると、論文は指摘する。最新の調査によれば、米国には約1億匹もの飼いネコがいるという。そのことを考えると、こうした地域的な影響が積み重なることで、全体では甚大になる可能性がある。

「都市部には、開発と生息地の分断化によって、すでに影響を受けている野生生物がいます」。そう話すのは、論文の著者の一人で、米ノースカロライナ州立大学の学部生だった頃に米国でのデータ収集を統括したトロイ・パーキンズ氏だ。

「外にいる飼いネコが増えるほど、地域の野生生物にとってはストレスや殺される可能性が大きくなります」と氏は言う。「絶滅の恐れがある野生生物が近くに生息している場合、ペットのネコが戸外を歩き回ることによる生態学的な影響は、さらに大きなものとなります」

戸外で何をしているのか

飼いネコの約10%が家の庭を出て、ほとんどの時間を自然の中で過ごしていた。森林や湿地をぶらつくネコは、人間が多く住む地域には生息していない生物を狩ることがあるだけでなく、自らが狩られる側にもなりうる。コヨーテやディンゴはネコを食べることで知られている。

調査によって、ネコにとってのもう一つの危険も改めて浮き彫りになった。車だ。ネコたちは6日間の追跡中に平均4.5回、道路を渡っていた。「データを受け取った飼い主の多くは、野生生物への影響よりも、道路を渡っていることについて心配していました」。そう話すのは、ニュージーランドチームのリーダーを務めたハイディ・キキルス氏だ。氏が調査の数カ月後に飼い主たちに連絡を取ったところ、実際に何匹ものネコが車にひかれたとのことだった。

キャット・トラッカーによって、飼いネコたちの外での生活がわかってきたものの、研究者たちが言うには、まだ調べなければならないことは多い。ネコたちが訪れている場所がわかったのは重要な進歩だが、環境への影響やネコ自身にとっての危険性を真に理解するためには、実際に彼らが何をしているのかを知らなければならない。

ネコ目線で動画を撮ることができる「キティカム」(ネコカメラ)を使うのも一つの手だ。チーターが狩りをするときの走行スピードを調べるために開発された技術を借用する手もある。

「現在、ネコの行動、特に狩りの頻度と場所をもっと正確に知るため、より精度の高いGPSと加速度センサーを組み合わせた技術を開発しているところです」とケイズ氏は話した。

(文 JONATHAN LOSOS、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年3月17日付]

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