人生を学ぶ35キロ ラ・サール名物「桜島一周遠行」ラ・サール高校・中学(下) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

歩き始めて20分ほどすると、目がゴロゴロして、口の中がざらざらしてきた。火山灰だ。しかしそれにも次第に慣れる。海沿いの道はすがすがしい。

潮の香りを乗せた向かい風が、少々強い。赤いジャージの生徒が私の脇を駆け抜けていった。私より15分以上あとにスタートした高校生だろう。追い越しざま、彼は浜辺に向かってペッとつばを吐いた。青い空、海、そして赤いジャージ。青春ドラマの一幕をスローモーションで見ているようだった。

次の瞬間、青春のしぶきを顔面に受けた。一瞬へこんだが、気を取り直して歩くことにした。

生徒たちは、走っては休みまた走るのをくり返す。私は10分で1キロのペースを保って歩く。何度も同じ生徒に追い抜かれ、追い越す。結局ペースは変わらないのだ。歩いている生徒を見つけると、話しながらしばらくいっしょに歩いた。

スタートのほぼ裏手に当たる地点から仰ぐ桜島

「キミは寮生? 自宅生?」

「自宅です」

「自宅生はスマホとかパソコンとか持っているの?」

「パソコンはありますが、スマホは持っていません」

「自宅生でもスマホはみんな持ってないの?」

「持っているやつもいますけど、持っていないやつも多いです。寮生が持っていないので、必要ないでしょと言われます」

「なるほど」

ずっと海沿いの平たんな道を歩くのだと思っていたが、ところどころ山道のアップダウンもある。黙々と歩いていると無心になってくる。景色を楽しむのではなく、ただ前だけを見て歩く。

灘や開成を蹴って来た生徒も

気づくと、桜島の表情が変わっている。裏の顔である。ちょうど半分まで来たようだ。17キロ地点にある中学校の校庭に、中間チェックポイントがある。そこで手早く昼食をとる。各自おにぎりやサンドイッチを持参している。寮生がもっているのは食堂の方々がにぎった大きな大きな握り飯だ。

今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
注目記事
次のページ
黙々と歩けばそのうち着く
今こそ始める学び特集
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら