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歩くほどに違った表情を見せてくれる桜島

歩くほどに違った表情を見せてくれる桜島

日本有数の活火山、桜島を望むラ・サール高等学校・中学校(鹿児島市)。その桜島を歩いて1周する全校行事が毎年行われる。なかには8時間近くかかる生徒もいるという厳しい徒歩行だ。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏が、生徒と触れ合いながら歩いて体感した行事の意味とは。

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体力に自信のない生徒には試練

2学期の期末テストが終わったあと、冬休みに入る前に、ラ・サールの中1から高2の全生徒は毎年「桜島一周遠行」に参加する。日々学校から仰ぐ桜島の1周約35キロを歩くのだ。ラ・サールの卒業生たちが懐かしむ名物行事である。今回、私もいっしょに歩いた。

桜島一周が初めて行われたのは1969年。もともとは夜間に歩く行事だった。高3の希望者が参加して夜を徹して歩いたのち、その足で模試会場へ向かったという武勇伝もある。

しかしその後、島の夜間交通量が増え、それにともなう事故も起きたため、1993年から日中に歩くようになった。桜島の火山活動が活発なときはやむなくコースを変えることもある。

行事の目的は「体力・精神力の強化向上を図る」「自然への関心や理解を深める」の2つ。谷口哲生副校長は、「地震などで交通機関が止まってもある程度の距離なら歩いて移動することができるという自信も身につくはず」と言う。

「えー、これ歩くの~」という声が聞こえてくる坂道

「えー、これ歩くの~」という声が聞こえてくる坂道

競争ではないが、順位は出る。生徒たちに配られるプリントには、「1時間5~6kmのペースで5時間30分~6時間30分で踏破することを標準とする」とある。最も早い生徒で3時間ほど、最も遅い生徒は8時間弱かかる。

朝、学年ごとに15分ずつ時間をずらして鹿児島港のフェリー乗り場前で集合する。寮の生徒たちは港まで貸し切りバスで移動する。自宅生はおのおの港までやってくる。

保護者の車から降りてきた中1に気分を聞くと、「テストが終わってすぐにこれは疲れますね」と早くもため息。テスト勉強を頑張ったのだろう。別の中1は「普段ぜんぜん運動をしないので、自信がありません。できれば参加したくないです」とぼやく。初めて参加する中1が不安なのは仕方ない。

フェリーでの移動時間は約15分。フェリーを降りるとそのまま隊列を組んで歩き出す。中1のスタートは8時10分、その後15分おきに中2・中3、高1、高2の順番で歩き始める。私は中2・中3といっしょにスタートした。

猛者たちは一気に走る

最初の1.4キロは追い越し禁止で列を崩してはいけないが、その後、猛者は走り出す。要所要所に教員が立ち、旗を振る。20人ほどの教員は生徒たちといっしょに歩く。各学年の最後尾には必ず教員が付いて、励ましながらいっしょに歩く。

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