論破はゴールじゃない ラ・サール英語ディベート部ラ・サール高校・中学(中) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

――部としての課題は何か。

「寮に住んでいると、部員同士で活発に意見交換ができることが強みなのですが、一方で、インターネットが使えないという点が大きなデメリットです。特にアカデミックディベートではあらかじめ決められたテーマに対して下調べをして、どれだけ資料を集められたのかが、大きく戦い方を左右します」(張さん)

「普通の高校生はパソコンやスマホで好きなときに好きなだけインターネットに接続して、必要な情報をいくらでも調べることができますが、僕たちにはそれができません。図書館で本を借りるか、学校のPCルームでインターネットに接続するしかありません。他校の生徒と連絡しようにも手段が限られるのが悩みの種です」(高橋さん)

――将来はどういう方向に進むつもりか。

「僕は理系で、工学系に進もうと思っています。技術開発でイノベーションを起こし、国際協力に貢献したいと思っています」(張さん)

「国際大会に出場したときにリビア系のイギリス人と友達になりました。彼が『戦争をなくしたい』と切実に訴えていたのがとても印象的でした。僕は将来、国連や国際的なNGO(非政府組織)に勤めて世界中のひとたちが同じ立場で議論ができるように教育を増大する活動をしていきたいと思います。国際的な議論をするには英語が話せることが大前提だと思っています」(高橋さん)

「将来は世界で活躍できるひとになりたい」と言う張さんと高橋さんの目が澄んでいた。連絡の手段は限られるものの、他校の生徒とのつながりをもてたことを本当にうれしそうに、誇らしそうに語っていた。彼らが身につけているのは相手を打ち負かすためのディベート術ではない。さまざまな事柄にさまざまな立場の見解がありそれぞれの意見に理由があることを理解する術(すべ)を身につけているのである。

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ラ・サール高等学校・中学校(鹿児島市)
創立は1950年。中学の1学年定員は約160人、高校は内部進学生を含めて約240人。学校に寮が併設されているので全国から生徒が集まる。生徒の約半数は寮暮らし。2019年の東大合格者数は34人。東大・京大・国公立大学医学部合格者数の5年間(2015~19年)平均は120人で全国10位。同じく国公立大医学部合格者数では全国4位。卒業生には野村ホールディングス元会長の古賀信行氏やりそなホールディングス会長の東和浩氏、NHK前会長の上田良一氏ほか、著名な政治家や官僚も多い。

新・男子校という選択 (日経プレミア)

著者 : おおたとしまさ
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 935円 (税込み)

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