論破はゴールじゃない ラ・サール英語ディベート部ラ・サール高校・中学(中) 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ

賛成チームの1人目が持ち時間5分間のなかで、「石炭は値段が高いし、エネルギーとして古い。世界各国から日本への印象も悪くなる。環境フレンドリーという観点から、日本は世界への手本を示すべきだ」として「日本は石炭の使用を中止すべきである」という主張に論拠を与える。次に反対チームの1人目が「経済成長のための選択肢はほかにない。海外にお手本を示すというが、具体的にどうすればいいのか」と反論する。

18世紀のエネルギー革命やバイオマスエネルギーなどのキーワードが飛び交う。全員が決められた順番で発言するディベートの応酬はトータルで約30分になる。もちろんすべて英語であり、ときに適切な英語が出てこずに難儀する場面もある。

勝敗のポイントを説明するマーティン・ウィリアムスさん(左から2人目)

ウィリアムスさんとそのほかの部員が審査員だ。審査員の手元にはディベートの進行状況とキーワードやポイントを書き込める用紙がある。そこにメモをとりながら、最終的にどちらのチームが優勢かを判定する。

今回の勝者は賛成チームだった。ウィリアムスさんが理由を述べる。「ポイントはほかの選択肢があるかどうかだったはず。その点で賛成派の主張に説得力があった。しかしなぜいますぐに変えることが必要なのかという理由についての説明は弱かった。反対チームもそこを突けばいいのに、しなかった」

ディベートが終わると、ウィリアムスさんは「きょうの話に関連する記事です。あとで読んでおいてください」と言って英字新聞のコピーを配布した。小泉進次郎環境大臣がCOP25で批判にさらされたことを伝える記事である。

ウィリアムスさんによれば、英語ディベート部の活動目的は主に3つ。1つは総合的な英語力向上。2つめは自信をもって人前で話すテクニックやクリティカルシンキングといったスキル面の養成。3つめは社会的関心を広めることだ。

ネットが使えないことが大きな不利

前部長で高3の高橋賢司さんと張沢立さんがインタビューに応じてくれた。3人は日本で行われた国際大会に特別枠で出場した経験もある。2人とも英語圏での生活経験はないが、英検1級をもっている。

――部の自慢は何か。

「鹿児島にいながら全国に友達ができることです。英語のレベルではラ・サールは他校に負けていないと思います」(張さん)

「ディベートを通して、英語でのコミュニケーション力が身に付くことはもちろん、ものごとを両側から論理的に考える力が身に付きます。この2つの力があれば、他の国や地域の出身者とも同じ地平に立って議論ができるはずです」(高橋さん)

――模擬国連には出場しないのか。

「それはそれで模擬国連同好会という部活があります。もともとは同じ組織だったのですが、活動内容がだいぶ違うので、いまは別組織になっています」(張さん)

――国際大会に出場してみてどうだったか。

「ハンガリーやタイにも友達ができたのがうれしかったです。いまでもEメールで連絡を取り合っています。日本のほかの高校の友達もできました。筑波大学附属駒場、渋谷教育学園渋谷、東大寺学園、聖光学院などです。受験勉強を頑張って同じ大学で学ぼうと励まし合っています」(高橋さん)

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