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変人と呼ばれてもいい 人生に余計なことする暇はない

20代へ80代から伝言(1) 細川護熙氏

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NIKKEI STYLE

学生が各界のトップにインタビューする「学生×トップランナー」。特別編として、20代の学生が、大きく年の離れた80代と対話する「20代へ80代から伝言」シリーズをお届けします。長い経験に裏打ちされた知恵を次世代に継承する企画です。初回は元首相の細川護熙氏です。

細川護熙氏は室町時代から続く大名細川家の第18代当主で、熊本県知事や首相をつとめた。1998年、60歳で政界を引退し、神奈川県湯河原町で隠とん生活に。陶芸に出会い、芸術家としてデビュー。陶芸や絵画作品を次々と生み出している。インタビューしたのは早稲田大学文化構想学部3年の西大知郎さん。早稲田の構内にアーティストの作品を展示する活動をしている西さんが、東京・品川にある細川氏のアトリエを訪ねた。

西 僕はもともとジャーナリズムを大学で学んでいたのですが、次第に芸術に興味が出てきたんです。芸術表現には人の考え方や行動を変える力があるんじゃないかと思って活動をしています。

細川 いいですねえ。例えば政治と芸術、政治と文化って、切り離して考えるものではなくて、つながっていると思うんです。僕は熊本県知事時代に「くまもとアートポリス構想」というのを始めました。パリとかローマって、ゆとりがあっていい感じがするでしょう? なぜ日本の都市ではゆとりを感じられないのかを考察するうちに、まちづくりの構想力が足りないと気づいたのです。そこで、熊本県の公共事業で作る建造物を国内外の著名な建築家たちに作ってもらおうと考えたのです。

建築家の磯崎新さんにヘッドになってもらって、イタリアの建築家レンゾ・ピアノさんに天草の橋を設計してもらったりしました。日本の気鋭の建築家にもたくさんお願いしました。結局、100カ所くらい作ってもらったかな。ちょっと面白い建築物が集積すれば、街が豊かで面白くなるでしょ。今も熊本には建築家の卵の学生たちが見学にくるんです。

西 僕のアートプロジェクトも、芸術作品を学生の目に触れさせたいという願いから始まったのです。学生が毎日授業で通う大学構内に作品があったら、学生が芸術とふれあえる機会を作り出せると思ったのです。

細川 なるほど。いま、2016年の熊本地震で被害をうけた熊本城の修復が進んでいますけど、私は修復を急ぐよりも修復の過程を見えるようにまわりに回廊をつくったりしたら、寄付はきっとたくさん集まりますよと提案したんです。いわば熊本城ガウディプロジェクト。復興のプロセスを見せることで観光客も呼び戻せますよね。政治と芸術はそういうふうにつながっていると思っています。

あえてバランスを崩すと面白いものができる

西 本当に政治と芸術は密接なんですね。ところで細川さんは今は何を制作なさっているのですか。

細川 大きな作品では、京都の南禅寺や建仁寺、龍安寺に奉納するふすま絵を水墨画で制作しています。同時にオランダのアートフェアに出品する油絵や漆絵も描いています。日本画も描くし彫刻もする。陶芸も続けています。ジャンルをあまり分けていないんですよ。油彩用のキャンバスに銀箔を貼ってから油彩絵の具を重ねて描いて、下から銀箔がちらっと見えてくるのも面白いし、油彩なんだけど一部で墨を使って、かすれ具合を楽しんだり。

アートフェア用に準備している絵は、最初は普通に富士山を描いていましたが、なんだか面白くない。それで、逆さにひっくり返して、湖に富士山が映っている構図に変えちゃいました。そういうふうに途中でどんどん自由自在に変えてしまうこともあります。とらわれないでちょっと遊んでみるのが面白い。

西 細川さんが自由にものを考えられる力は、そのように芸術表現で遊ぶことを通して手に入れたのですか。

細川 そういうわけではないです。子供の頃から天邪鬼(あまのじゃく)だったんです。人が右というと、いや違う左だ、といった具合で、生来あまり素直じゃないのです。陶芸でも、ろくろを速く回して1日に300個作れるような人が上手だと思い違いをしている人がいますが、私はそう言われると逆を考える。ゆっくり回して、あえてバランスを崩すと、光悦の茶わんのように手作り感が出て、面白くなるんです。人と同じことをやっていたら進歩がないですからね。ノーベル賞を受賞した人だってそうでしょう?

西 若いころから芸術に関心があったのですか。

細川 ほとんど関心がありませんでした。若いころは政治家になると決めて、まっしぐらでした。高校の頃に決めて、大学は新聞学科がある上智大学へ。政治家になるには新聞記者になるのが一番の近道だと思ったから、当時は政治家を多く出していた朝日新聞の記者になりました。芸術は60歳で政界を引退してからです。人生、軌道修正はいくらでもできるし、とにかく関心のあることを思いっきりやるのがいい。

西 まさに人生100年時代ですね。

すぐに価値のなくなるものに貴重な時間を費やすな

細川 でもね、これは最近よく思うんですけど、人生はやっぱりそれほど長くない。100年といったって、大した長さではないんです。だから、できるだけ若いときに目標を定めて、それに向かって進んでいくことが大事だと思いますよ。

西 人生は長くない、ですか。まだ21歳の自分には想像がつきません。

細川 中国の詩人、陶淵明は「人生は幻化に似てついにまさに空無に帰すべし」とうたっています。人生は幻の花のようで、あっという間に過ぎ去ってしまうよという意味ですが、私はほんとうにその通りだと思う。ですから、余計なことはしないこと。目標を限定的に定めるのがすごく大事で、そこへ向かって最短距離で進んでいかないと時間が足りない。

私はできるだけ余計なことをしないんです。若いころは父に猛反対されても押し切って政治家になった。引退後は芸術に一直線です。だから変人だと言われますが、そのくらい徹底していかないと、自分が満足するような結果にはならないんじゃないかと思います。

西 細川さんは古典からいろいろ学んでいらっしゃるのですね。

細川 それも余計なことをしないという話につながっています。古典を読むということは、評価が定まった人たちの生き方を知るということです。歴史に名を残すような人たちが考え抜いて書き残してきた書物ですから、若い方々にもぜひ古典を読んでもらいたいと思うのです。世の中、面白いものはたくさんあります。きっと著名な文学賞を受賞するような作品も面白いのでしょう。でも、そういうのを読み出したらきりがない。人生が足りません。1週間や1か月で価値のなくなるようなものに時間をとられることは、時間の無駄です。

西 人生が足りない!

細川 ギリシャの哲学者、プラトンは面白いことを言っています。人間には3種類ある。1つ目は死んでいるもの。2つ目は死んではいないが、ただ生きているだけのもの。そして3つ目は海に向かって旅立つもの。大部分の人は2つ目の死んではいないがただ生きているだけにあたるのでしょう。でも、やはり若い皆さんには3番目の海に向かって旅立つ人になってほしい。

海とは希望、理想、ロマンです。ただ無目的にアクティブに生きるだけでは意味がないんです。自分のロマンをもって、ロマンに殉じる気持ちがあるか。それがあれば、自分なりに満足した人生をおくり、満足して死ねるんだろうと思います。

西 細川さんは海にこぎ出したんですか?

細川 目標を定めて、やりたいことをやってきたということでしょうね。人がどう思ってもかまわない。いま手掛けているアート作品だって、名を残したくて作っているわけではない。評価していただけるならうれしいだろうけど。作ることが楽しくてやっています。勲章だっていらないし、桜を見る会にも行きません。首相の時は仕方なく行きましたけど。やりたいことをやってきた人生、なかなかよかったんじゃないかな。

(文・構成 藤原仁美)

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