日本企業で女性幹部が増えるには 先端20社の例に学ぶ『女性が共に、さらに輝くということ』著者に聞く

女性こそ「潜在力」で評価せよ

保守的な会社組織で女性管理職を増やすには、具体的にどこから手をつけていけば良いのだろうか。リュー氏はまず人事評価制度の改革を挙げる。ザ・ドリーム・コレクティブが日本企業の昇進・昇格の実態を調べたところ、男性社員は潜在能力で評価され、女性社員は過去の実績で評価される傾向があった。「わたしたちはコンサルティングで、こうしたバイアスが存在することを人事部が丁寧に説明しています」(リュー氏)

女性社員自身も「内なるバイアス」を持つケースが多い。自分の能力を過小評価するとか、昇進の機会があっても「自分には向いていない」と尻込みしてしまうなどだ。こうした文化的要素は、女性活躍の壁になっている。例えば男性は60%の自信があれば積極的に昇進にチャレンジする。一方で女性は、90%の自信を持っていても、手を挙げることに二の足を踏む。こうした違いを踏まえ、人事部や直属の上司、あるいはメンターが彼女たちに自信を持たせて、背中を押すことも重要だ。

この点でリュー氏がモデルケースとして紹介するのがリクルートホールディングスの瀬名波文野氏のキャリア形成だ。彼女は36歳の若さで、同社の経営企画、人事、広報、サステナビリティー担当の役員を務めている。米国のグループ会社「インディード」のチーフ・オフ・スタッフも兼任している。彼女のキャリアの転機は27歳の時だという。買収したばかりのロンドンの派遣会社社長の社内公募に応募して、ポストを与えられた。

彼女は当時、ビジネス英語、マネジメント経験、海外駐在経験などで応募条件をほとんど満たさなかったそうだ。しかし「自分の殻を破ろうという情熱や積極性がありました。そして、潜在能力を評価し経験のない若い女性を起用した人事部の目利きもうまく機能しました」とリュー氏は解説する。

多様性が経営を伸ばす

『女性が共に、さらに輝くということ』(幻冬舎)

瀬名波氏のほかにも、高級ホテル、アマン東京の総支配人を務める八木朋子氏、ブリストル・マイヤーズスクイブの執行役員の辻和美氏、クーパービジョン・ジャパン社長の井上佳子氏といった女性リーダーのロールモデルが本書には数多く紹介されている。一読すれば、働く女性の読者は大きな刺激を得るはずだ。

女性の「内的バイアス」には、リーダーシップに対する誤解もある。「ミーティングで自分の意見をはっきりと表明し、率先して指示を出してチームを引っ張るのは良いリーダーシップです。でもリーダーの在り方は一つではありません」とリュー氏。コンサルティングでは、リーダーシップについて理解を深めてもらうことにも力を入れている。例えば、「共感性」に優れている人は自分の長所がリーダーシップとは関係ないと思いがちだ。しかし、チームの人たちの話を聞き、共感してサポートするのもリーダーの役割だ。

管理職に占める女性比率で見ると、本書の中でのトップランナーはLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンジャパンだ。全社員の女性比率が74%。そして女性管理職比率が54%に上る。一般的な日本企業がこれに匹敵するほど女性幹部を増やそうと思ったら、達成目標に強制力を持たせる「クオータ(割り当て)制」を導入しなければ実現できないように思える。そのクオータ制の効果についてリュー氏に聞いてみた。「クオータが機能する組織と、そうでない組織があります」というのが彼女の答えだ。「重要なのは、LVMHの日本法人が、同社のグループで世界2、3の売上高を達成している点です。多様性や男女比のバランスがとれていれば、営業成績も良いという証明になっていますね」(リュー氏)。女性リーダーの活躍は「あればいいな」というレベルの話ではなく、「なければ企業は生き残れない」くらいの重みがあると考えるべきだろう。

「女性活躍」の面で後発組の日本だが、121位にとどまる「ジェンダー・ギャップ指数」の順位は今後高まるのだろうか。リュー氏は「会社組織、経営者、男性、そして女性が力を合わせてきちんとコミットしていけば、2030年にはトップ50に上がると考えています」とエールを送った。

(若杉敏也)

女性が共に、さらに輝くということ

著者 : ザ・ドリーム ・コレクティブ
出版 : 幻冬舎
価格 : 1,650円 (税込み)

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