2019年、靴業界の話題はスニーカー一色に染まった。カジュアルでもビジネス用途でも履けるスニーカーのラインアップが充実し、売り場を席巻したのだ。だがその裏で、トラッド靴はひそかに進化を遂げていた。スニーカーブームが一巡したいま、注目を集めつつある紳士靴とは何だろう。スニーカーになじんだ男性たちも受け入れやすいビジネスシューズとは。前回に続き、服飾評論家、石津祥介さんとリーガル日本橋(東京・中央)をたずね、リーガルコーポレーション商品企画一部部長の若松隆行さんとともに、最新の紳士靴事情を探った。
トラッド靴の「らしさ」はそのままに機能性を向上
――2019年はスニーカーが市場を席巻しました。
石津「これから、男の身につけるもので劇的に変わるのはたぶん靴でしょうね。男性も女性も、スニーカーの楽な履き心地を体が覚えてしまって、こんなファッションには合わない、という服装にもスニーカーを合わせるようになっています。もう窮屈な靴には戻れなくなっているでしょう」
若松「リーガルは昔は重たい靴、というイメージが強く、それが良しとされた時代もありました。でもいまは、手に持っただけで重く感じる靴は敬遠されます。スニーカーブームが業界に与えた影響は大きいですよ。うちもビジネスシューズで軽さや柔らかさを追求するようになりました。トラッド靴の『らしさ』はそのままに、機能性を高めたものをそろえた結果、お客さまの支持を集めています」
――例えばどんなタイプがありますか。
若松「こちらのプレーントゥやストレートチップは、見た目は普通の靴と変わりませんが、エアローテーション仕様です。歩いたときに外の空気が靴の内部に送り込まれて循環する構造で、歩きやすさが売り物です。また、内側にゴアテックスの靴下が仕込まれている靴もあり、水が入らず透湿性にすぐれて雨の日でも快適です。ゴルフシューズと同じ仕組みで、ダイヤルを回すと足にフィットするひもなし靴もあります。トラッド靴のたたずまいで、どこまで快適さを提供できるかということを開発のポイントにしています」

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