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チキンソテーと違う 「串に刺さない」焼き鳥の味わい

「ひらこ」では、宮崎の自然環境で作られるうま味が凝縮した筋肉質の味に、各銘醸地の日本酒をペアリング

2種のコースのどちらにも含まれ、特に好まれる部位だという「もも肉」と「砂肝」を食べてみた。高級すし店のような台の上に、店主の高岩誠さんが焼き上げた鶏がすっと置かれ、日本酒とのペアリングを楽しむコース(6000円~、同)を注文した客には一緒にグラスも添えられる。モモ肉と合わせるのは奈良県の特別純米酒「ふた穂」。

高岩さんの勧めに従い、まずは日本酒を口に少し含み、そして焼き鳥をもぐもぐ。そしてまた日本酒をゴクリ。宮崎県でのびのびと育った名古屋コーチンは締まった筋肉質で、じわっと脂身が広がる感じはない。しかし、うま味がぎゅっと濃縮し、炭火の香ばしい香りとともに、文字通りかむほどに口の中で味わいが増してくる。そしてほんのり甘くフルーティーな日本酒が、料理のソースのように肉の味を引き立てる。

「ひらこ」の親子丼は、鶏のだしで味付けすることから、孫を加えて「親子孫丼」というネーミング

砂肝も同様でコリコリの食感を感じた後、かんで飲み込んでからも強いうま味が喉の奥からじわじわと上がって来る。カウンター割烹(かっぽう)のような静ひつな空間、そして提供の仕方といい、究極にシンプルかつ上品だが確かにこれも一つの焼き鳥に間違いない。

コースのシメで大好評だという「親子孫丼」も食べてみる。ゆるく火入れした鶏肉と卵をだし汁とご飯と一緒に味わうもので、すっきりしただしと甘じょっぱく軟らかい半熟卵、弾力のある肉が一体となり、ハマる味だ。ユニークな料理名は、鶏肉と卵だけでなく、だしも鳥だけで取ったものを使っていることに由来する。

「うちの地鶏は部位ごとに味が大きく異なります。串に刺さないのはそれぞれ焼き方を変え、どの部位もしっかり中心まで火を通す必要があるためです。私自身が大事に育てた鶏をベストな火入れでお出しし、心ゆくまで堪能していただきたいと思っています」(高岩さん)

以上、まったくスタイルの違う「串に刺さない焼き鳥」を体験した。従来の串打ちのものと見た目は別物、しかし食べてみるとチキンソテーではなくやっぱり焼き鳥なのだ。ごく身近でシンプルなこの料理の、不思議な奥深さを感じた。ニュージャンルの串に刺さない焼き鳥、また別の進化や変貌を見せてくれそうで、目が離せない。

(フードライター 浅野陽子)


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