人のためのハイテクを

田中 先日、北海道のテストコースで、「最近のホンダは(ライバルと)戦わなくなったのか?」みたいな話をしたじゃないですか。一見そう感じるかもしれないけど、これは違う戦いなんです。

小沢 でもね。この時代、僕ら自動車ジャーナリストもそうですけど、「自動運転ははやらない」「電動化は言うほど普及しない」って言うと遅れた人間みたいに見えるんですよ。「オマエ、なに言ってるんだ? 勉強してないのか?」みたいな。今のホンダもある種そういう方向です。電動車なのに、電動風味で勝負してない。よくその路線に踏み込んだなと。

田中 それはまさに「いかに人を中心に考えるか」っていうことだと思うんですけど、どんなテクノロジーも、しょせんは人の役に立つために生まれてくるもの。それはホンダセンシングみたいな最新システムも、電動駆動の2モーターハイブリッドも同じだと思うんです。すべては人のためであって、テクノロジーをひけらかすため、テクノロジーを競争させるためのものではない。そこが今回のフィットの立ち位置なんです。

小沢 でもそれはある種の理想主義で、今はテクノロジーがウケる時代です。例えば今スマホカルチャーが世界的に広まってしまい、インパネ操作はタッチスクリーンのほうが便利でオシャレに見えちゃう。だから巨大スクリーンにいかに多機能を盛り込むか、スイッチ数をいかに減らすかみたいな勝負になっています。でもあれって結構使いにくいんですよ。スクリーンを見ないと操作できない。

田中 ですから新型フィットはエアコンの温度調整も風量調整も送風口選びも全部アナログ式のダイヤルを使ってます。

小沢 それ、勇気いりますでしょ。あとオーディオの音量ツマミもありましたよね。

田中 あります。

小沢 あれも最近見ないじゃないですか。iPhoneがホームボタンを省略したように、ないほうがハイテクに見える上、安くもできるんです。でも実は使いにくかったりするんですが。

田中 運転席のメーターもまさにそうです。液晶メーターが最近増えていますが、アレって何でも描けちゃうんです。だから大抵の液晶メーターのクルマは、メーターがとてもにぎやかで「こんなんも描けますよ」ってデモンストレーションになっている。だけど、それって本質的じゃなくて、情報は詰め込み過ぎないほうがいい。最低限スピードとシフトポジションが分かれば運転はできるわけで、フィットはそうしています。もちろん切り替えれば情報は増やせますが。

必要な情報だけをシンプルに表示する新型フィットの液晶メーター
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