「言いたいことを言えない。耳を傾けてもらえる立場じゃなかった時期も、けっこうきつかったですね。別に主役ばかりやりたいとか、そういうことはまったく望んではいないんですけど、もの作りの一員として、認められたいと思ってました」

豆をひいてコーヒーを飲む朝に憧れる!

03年、9歳の時にデビューし、05年のドラマ『女王の教室』のいじめっ子・田中桃役で注目された伊藤さん。20代に入って朝ドラ『ひよっこ』などで改めて脚光を浴び、今や映画やドラマに引っ張りだこだ。今年はハスキーボイスを生かし、テレビアニメ『映像研には手を出すな!』では主人公の声を担当した。今、女優としてどんな「ステップ」にいると考えているのだろう。

「まだまだです。むしろここからスタート、くらいに思ってますね。これまで全然、順調に階段を上がってきたわけじゃないので。特につらかったのは、オーディションに落ち続けた時期や、1つの役のイメージで見られていた頃。いじめっ子だったら、ずっといじめっ子役。ふざけてる役だったら、ずっとふざけてる役と、一辺倒なお芝居を求められた時期があったんです。そういう意味では、今は役の幅が広がって、幸せだなあと。声優のお仕事も、自分の声が武器になるなんて想像もしてなかったんですよ。声はむしろ、コンプレックスだったので」

プライベートでは最近、キッチン用品をよく買うという。

「この間、すっごく切れる包丁を買いました! お昼のテレビショッピングを見て、衝動的に電話しちゃったんです。『3本セットの包丁ください!』って。それを家族で試して、『すごくない?』って盛り上がりました。本当にもう、サラッサラ切れるので。

お料理ですか? ああ~、私は本当に気が向くときしかやらないし、あんまり包丁を使う料理、しないんで(笑)。だからその包丁も、『何か作ってよ』って親に渡しました。そういえば最近、フライパンも買いましたね。まだ使ってないですけど。

今、欲しいのは、コーヒーメーカーです。もともと飲めなかったコーヒーを、とある夏から飲めるようになりまして。私、普通の人と違って、コーヒーを飲むと眠くなっちゃうんですよ。それでも飲んじゃうくらい好きで、いつも持ってます。喫茶店も好きで、コーヒーを喫茶店で飲むと『おっとなぁ~』と思いますね(笑)。

今は、家でもおいしいコーヒーをいれられる人になりたくて。何なら、コーヒーミルも欲しいなと。それで優雅に、豆をひく朝、とかやりたいです」

伊藤沙莉
 1994年生まれ、千葉県出身。2003年、9歳でデビューし、『TRANSIT GIRLS』(15年)、『ひよっこ』(17年)、『この世界の片隅に』(18年)、『これは経費で落ちません!』(19年)、『ペンション・恋は桃色』(20年)などのドラマで幅広い役柄を演じる。主な出演映画に『獣道』(17年)、『パンとバスと2度目のハツコイ』(18年)、『榎田貿易堂』(18年)、『寝ても覚めても』(18年)など。18年にTAMA映画賞最優秀新進女優賞、ヨコハマ映画祭助演女優賞ほかを受賞。4月からのNHKドラマ『いいね!光源氏くん』に出演、4月17日には映画『劇場』が公開される。

『ステップ』

結婚3年目、30歳の若さで妻に先立たれた健一は、営業部から総務部へ異動し、2歳半の娘・美紀と保育園へ向かう。日々、仕事に家事に忙しく、毎日ヘトヘト。時に自信を失い、落ち込みながらも、周囲の人々に支えられながら前へ進む。そして40歳、美紀が小学校を卒業する頃、大きな転機が訪れる……。監督、脚本、編集・飯塚健 原作・重松清『ステップ』(中公文庫刊) 出演・山田孝之、田中里念、白鳥玉季、中野翠咲、伊藤沙莉、川栄李奈、岩松了、日高七海、角田晃広、片岡礼子、広末涼子、余貴美子、國村隼 2020年4月3日(金)全国ロードショー

(文 泊貴洋、写真 藤本和史)

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