内定辞退は「謝罪」ではない 伝え方も社会人の一歩通年採用時代の就活のトリセツ(5)

2020/4/2
法政大学の田中教授(写真左)とBeyond Cafeの伊藤社長
法政大学の田中教授(写真左)とBeyond Cafeの伊藤社長

法政大学キャリアデザイン学部でキャリア論を教えている田中研之輔です。2021年卒の採用広報が解禁され、企業へのエントリーが始まっていますね。選考の解禁は6月ですが、実態を見ると、新卒採用は早期化していて、すでに内定をもらっている学生もいます。

ただ、その一方で新型コロナの影響を受け、選考活動の遅れやオンライン化の動きが増えています。全体の傾向として、就活終了まで時間がかかり、長期戦になる就活生も増えることが予想されます。焦らずに就活に向かいましょう。

先日、私のところに「A社に内定しました……」とゼミ生の岡田聡君(仮名)から連絡がきました。喜ばしい報告のはずが、電話越しの岡田君の声が弾まない様子。理由を尋ねると、内定直後から岡田君がある悩みを抱えることになったというのです。

「内定を断った方がいいですか? まだ、他の企業の就活もしたいので……」

2008年から就活をみてきて、ゼミ生の9割が「内定辞退」に関する悩みに直面してきました。内定をもらう時期も、3年生の11月から12月にかけてベンチャー企業は、内定を出し始めます。人事担当者は、「周りには言わないように」と就活生に口止めをしているので、内定をもらっている就活生がいることは、あまり知られていません。

岡田君は、複数社の選考にエントリーしていますし、現時点で、A社で働くことを決めかねています。さて、これらの前提を踏まえて、岡田君にどんなアドバイスをしますか?

私は「今の時点で、内定を断る必要はない」と返答しました。その理由は、2つです。

(1)岡田君がA社で働くことも現実的に視野に入れていること

(2)A社の内定を辞退しても、他の企業から採用されるかは、未確定であること

学生が不安に駆られる「内定承諾書」の実態

内定報告を受けた1週間後に、岡田くんから再び、連絡がきます。

「内定承諾書に印鑑を押すようにと言われました。どうしたらいいですか?」

他の企業の選考も進んでいて、状況は先日とは変わっていません。企業が期日を決めるのであるならば、A社の内定承諾書にサインをするようにとアドバイスをします。

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内定後のトリセツ