根拠ない自信で起業 乳がん検診装置に挑む女性CEOリリーメドテック最高経営責任者(CEO) 東志保氏(下)

起業家の世界で、女性であることの意味

起業家の世界で、女性はまだマイノリティーだ。本人の覚悟が決まっても、「女性経営者」という色眼鏡で見られることがなくなるわけではない。だが、表舞台に立つCEOとして、資金調達の責任を一手に担う東氏は、「事業の成功」という遠くのゴールを見据えている。

「経営者が女性であることが『ユニークである』ととらえられ、結果として事業が注目を浴びるなら、それもいいと思います。実際、乳がんは女性特有の疾患であることから、女性の社会的地位が上がらないとスポットが当たりにくい分野でもある。男性にはなじみが薄い市場だからこそ、女性である私が、患者を支える家族としての当事者経験も踏まえて、ここに社会課題が存在するのだと示すことには意義があります」

一方で、女性であることを理由に、東氏自身の言葉に耳を傾けようとしなかった投資家に対しては「パートナーとしての信頼関係を築けない。だから、ミッションを共有できるほかの相手を探すだけ」と潔い。市場を新たに開拓していくベンチャー企業の事業の成否は、どこまでいっても未知数。出資する投資家とは、ある種の運命共同体のような関係だからだ。

日頃は強い口調で語りかけるタイプではない。でも、CEOとしてのプレゼンテーションなどで表舞台に立つと、発言にも振る舞いにも自然と熱がこもる。

「戦いですから。迷いがあっては伝わらない。根拠のない自信でもいい。『社会を変えるのは今しかない』と退路は断って言い切ります。思いが強いほど、同じ熱量で取り組んでくれる頼もしい仲間が集まってくる実感もあるんです。同じ女性で起業を志す人に対しては、とにかく自分を信じることからすべてが始まると伝えたい」

実用化の先には、グローバル市場への進出も視野に入れる

「リングエコー」は医療機器としての申請を経て、2年以内の実用化を目指す。量産化態勢の構築も大きな課題だが、東氏はその先の展開も視野に入れている。

「乳がんの早期発見は、米国などでも大きな課題として注目されています。ですから、将来的には国内だけでなく、アジアや米国、EUなどグローバル市場への進出も狙いたい。AIによる画像診断支援や、治療装置の開発も考えられると思います」

東氏の思いに共鳴した出資者も現れている。独立系ベンチャーキャピタル(VC)のビヨンドネクストベンチャーズや科学技術振興機構(JST)、芙蓉総合リースなどが資金を供給。医療情報サービスのエムスリーも出資者に名を連ねた。女性の健康やライフスタイルの悩みに応える「フェムテック」サービスが勢いづく流れもあり、東氏のリベンジは賛同者を得て、大きなムーブメントに育ちつつあるようだ。

(ライター 加藤藍子)

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