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東志保CEOは日立製作所やJEOL RESONANCEを経て、2016年に起業した

東志保CEOは日立製作所やJEOL RESONANCEを経て、2016年に起業した

女性の体に負担の軽い乳がん診断装置の開発に取り組んでいるリリーメドテック(東京・文京)の東志保最高経営責任者(CEO)は経営者経験ゼロで起業に踏み切った。背中を押してくれたのは、東氏の夫で、最高技術責任者(CTO)を務める隆氏だった。相次いで資金調達を成功させ、実用化が間近に迫る今、東氏は「最初は根拠のない自信でもいい」と、「情熱ドリブン経営」の意義を感じ取っている。

<<(上)きっかけは母の死 体に触れない乳がん検診装置に挑む

父の急死で航空宇宙研究の道を断たれた東氏はエンジニアとしてメーカーに勤めていた。「起業」という選択肢は、それまでの人生で一度も頭に浮かんだことがなかった。しかし、超音波治療の研究者で夫の隆氏から、新しい技術との出会いがもたらされたことにより、起業が現実味を帯び始める。

リリーメドテックが開発に取り組んでいる乳がん診断装置「リングエコー」のもとになっているのはその名の通り、リング状に配置された振動子から超音波を照射し、3D画像を得る技術だ。隆氏は2011年頃から、東京大学の研究室でこの技術の開発に乗り出していた。

「実際に撮影された画像を見て、その鮮明さに驚きました」と東氏は振り返る。「高校時代に悪性脳腫瘍で母を亡くしてから『医療は病気の前に無力だ』という思いにとらわれていました。しかし、『この技術なら勝てるかもしれない』と感じました」

照準を合わせたのは、母親を襲ったのと同じ病気ではない。リングエコーの技術との親和性が高いと判断した乳がんだ。

起業前に複数の専門医にヒアリングを重ねるにつれ、「検査技術が成熟していれば救えたはずの命」の存在に気付いた。その社会へのインパクトは多くの場合、「罹患者数」や「死亡者数」などの統計によって表されるが、東氏は自身のつらい原体験があったからこそ、その数字の背景に、患者や家族らの生々しい苦しみがあることを知っている。

「起業家が何をモチベーションにするかは、人それぞれだと思いますが、私の場合は『病気に技術でリベンジしたい』という闘志が大きいです」と東氏は力を込める。従来のマンモグラフィーでは発見が難しかったタイプの乳がんの発見にも、試作機では成功している。

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