「専業主夫」も褒められたい著述家、湯山玲子さん

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著述家、プロデューサー。東京都生まれ。「女装する女」など著作多数。クラシック音楽のイベント「爆クラ!」を主宰。テレビのコメンテーターとしても活躍。
著述家、プロデューサー。東京都生まれ。「女装する女」など著作多数。クラシック音楽のイベント「爆クラ!」を主宰。テレビのコメンテーターとしても活躍。

定年退職して、「専業主夫」になりました。料理、掃除、洗濯など家事を頑張っているつもりですが、妻からは「手を抜いている」といつも叱責されます。人は褒められて伸びると思うのですが……。妻は50歳を過ぎて仕事に目覚め、今も働いています。(東京都・60代・男性)

◇   ◇   ◇

定年退職して「専業主夫」になる。うーん、時代の流れにまんまと乗りましたね。

いや、これを悪口と思わないでください。もし時代が20年前なら、相談者氏はそういう生き方をしなかったと思うからです。仕事する妻を家事で支える夫というものは単なる変わり者でしたが、今は「カッコ良く男らしい」に世間相場が変わった。イクメンに似たところがありますよね。

「~さん、定年後は専業主夫になって、働く奥さんを支えているんだってさ」「へぇ、ステキね。ウチの亭主なんて、家でテレビにへばりついて、世の中に悪態ばかりついているわよ」などという周囲の声が聞こえてきそうです。

相談者氏もそういった空気をベースに当然、妻からも感謝されるはずと思いきや、叱責ばかり食らって不機嫌になっている。なぜ奥さんは褒めないのか、というと、これは「軽い復讐(ふくしゅう)」でしょうね。彼女が家事全般を担当していたときに、相談者氏は褒めるどころか、何の反応もしてきていないはずだからです。

仕事はお金や出世や他人からの評価という報酬が帰ってきますが、家事労働にはソレがない。奥さんのダメ出しは、「褒められないのが当たり前の主婦の仕事を私は長年やってきた。そんな出来ではアナタを褒めないし、私レベルに到達するまで注文もつけるよ」ということでしょう。土日にちょこっと子供と遊んでイクメン気取りになっている夫に対する愚痴は、大人女子会の定番ですが、それと同じ。

相談者氏のとる道はふたつあります。ひとつは、専業主夫はやめて、報酬などのある仕事人生にカムバックする。ネットでプチビジネスを展開するのもいいでしょうし、その場合、奥さんとは家事を分担し合うイーブンの関係になります。もうひとつは家事を極めて、褒められたい欲求などと関係がない、その奥義にまで到達することです。

実は専業主婦のなかには昔から、生活を美意識で固めたり、心地よい暮らしを衣食住で追求した達人がたくさんいるのです。図書館に行って、「暮しの手帖」などの雑誌や、家事に関する本を読んでみては? それらの中に、今後の人生をかけて悔いない、面白くやりがいがある専業主夫という「仕事」の到達点が見つかるかもしれません。

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