男性の朝の不思議 レム睡眠との深い絆を科学する

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/3/31
ナショナルジオグラフィック日本版

写真はイメージ=PIXTA

睡眠はレム睡眠とノンレム睡眠に分けられる(「『夢はレム睡眠のときに見る』のウソ」参照)。俗に、「ノンレム睡眠は脳の休息、レム睡眠は体の休息」のためにあるなどと言われるが、これは睡眠の役割を単純化しすぎである。本コラムでもこれまで何度も取り上げてきたように、睡眠とは単に体を横たえて休んでいる静の状態ではなく、記憶の固定、細胞の修復、免疫調節など生体内の各所で固有の活動が活発に、かつ同時並行で行われている。

大脳皮質が発達した霊長類や人間では深いノンレム睡眠が長いのが特徴で、睡眠中でもとりわけ深いノンレム睡眠中には脳活動が全般的に不活発になり、脳血流量や代謝量も低下する。ノンレム睡眠は深部体温(脳の温度)の低下と連動して出現する、つまり脳のクールダウンが主要な目的の一つと推測されることなどから、「ノンレム睡眠は脳の休息」という表現は、その機能の一部を切り取った形にはなるが間違いではない。

一方で、「レム睡眠は体の睡眠」というのはレム睡眠の役割の一面のみしか表していない。確かに、レム睡眠中には、鮮明な夢を見るなど脳の活動は覚醒時に近いほど活発でありながら、体の骨格筋(自分の意志で動かせる四肢や体幹の筋肉)は弛緩(しかん)して寝返りも打てず見かけ上は体が静止した状態になる。

しかし、体内環境は大いに異なる。ノンレム睡眠中には血圧、心拍数、呼吸数は低下してサイレントな状態になるのに対して、レム睡眠中には交感神経が活発になり、血圧や心拍数は乱高下し、呼吸は乱れるなど「自律神経の嵐」と表現されるように「体の休息」とはほど遠い状態に陥る。そして、男性のシンボルである陰茎もまたレム睡眠中に見事に目覚めて勃起するのである。

レム睡眠と同時に始まる

最初のレム睡眠は寝ついてから1~2時間ほどで出現し、以後平均して約90分周期で一晩に4~5回出現する。レム睡眠は睡眠時間全体の20~25%を占める。7時間睡眠であれば1晩に80~100分ほどのレム睡眠が出現する。1回あたりのレム睡眠は平均で20分ほどだが、体内時計の指令で明け方になるにしたがって長くなり、最後のレム睡眠は1時間以上も続くこともある。

健康な成人の典型的な睡眠の経過図。この例では0時に就床(消灯)して8時過ぎに起床している。レム睡眠は平均して約90分周期で一晩に4~5回出現する。(画像提供:三島和夫)

そして陰茎勃起はレム睡眠とほぼ同時に始まる。レム睡眠に入ると自律神経の影響で陰茎の深部を通る動脈が拡張して海綿体(陰茎内のスポンジ状の組織)内に血液が流入して陰茎が膨大する。すると静脈が圧迫されて血液は流出しにくくなり、ますます陰茎は勃起し、かつ持続する。さらに尾てい骨の辺りから出て陰部を支配する仙骨(せんこつ)神経が活性化されて海綿体の筋肉が収縮し、陰茎をより堅固にする。このようにしてレム睡眠中に男性のシンボルは勃起し続けるのである。レム睡眠が終了するとこれらと逆の現象が生じて陰茎は速やかに萎縮しはじめる。

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