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多くの企業が経営の重要課題にDX(デジタルトランスフォーメーション)をあげる。この経営手法の成否を左右するのは、デジタルを使うことで「市場創造」が実現できるかどうかだ。今回紹介する『90日で成果をだすDX入門』は、短期間に事業を成功させるためのノウハウをコンパクトにまとめている。多くの企業が陥りやすい「つまずき」を丁寧に解説することで、実践に役立つ参考書となっている。

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須藤憲司氏

須藤憲司氏

著者の須藤憲司氏は2003年に早稲田大学を卒業後、リクルートに入社。同社のマーケティング部門、新規事業開発部門を経て、リクルートマーケティングパートナーズで執行役員を務めました。その後13年に米国で「Kaizen Platform」を創業。現在は日米2拠点で事業を展開。ウェブやモバイルのUIを改善するサービスに加えて、動画広告改善の「Kaizen Ad」やクラウド上で企業のDXプロジェクトを支援する「KAIZEN TEAM for X」に取り組んでいます。

「囲い込まれたい」ですか?

DXというのはとても新しい言葉です。デジタル化との違いについて疑問を持つ読者が多いかもしれません。著者はDXを「デジタルを活用して、圧倒的かつ優れた顧客体験を提供し、事業を成長させること」と定義しています。一方、業務効率化やプロセス改善に役立てる程度なら、それは「デジタル化」です。より稼げるようになることこそがDXの原理原則だと著者は主張します。

著者はコンサルタントとして多くの企業に関わっています。こうした経験から、日本企業の経営陣がとらわれる「思い込み」について指摘します。一例が、BtoC企業の直面する顧客との関係性の激変です。

  日本企業の経営会議に、私も参加する機会がしばしばあります。そこでよく出る話題が顧客の「囲い込み」です。私はその言葉を聞くたびに、こんなふうに発言するようにしています。「この中で囲い込まれたい人がいたら手をあげてください」と。みなさん、すごくキョトンとした顔をされるのです。
  つまり、自分は囲い込まれたくないのにもかかわらず、なぜ、他人を囲い込めると思ってしまうのでしょうか。そして、苦労して囲い込んだとしても、そこで何をしているのでしょうか。せいぜいが、セール情報やポイント獲得のダイレクトメールをたくさん送ったりするくらいが関の山のはずです。まさに「釣った魚に餌をやらない」ような施策です。
  そういった場所へ、これからのユーザーは自らのデータを預けたいとは感じなくなってきます。つまり、ユーザーは囲い込めないどころか、ユーザーから選ばれ続ける会社にもなれていないのです。
(1 デジタルが巻き起こした新潮流 30ページ)

いかがでしょうか。最近は消費者保護の観点から、サイトからユーザーが簡単に退会していける手段を提供する方向にも動いています。その意味からもユーザーに魅力を提供し続けられないビジネスは続きません。商売をするために取り組むべきことはただ一つ。「良い体験を提供し続けることしかありません」と著者は断言します。これも、デジタルが起こした変化の一つであり、我々のID戦略の在り方そのものについて考え直す必要があるといえます。

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