転職に逆風 コロナショックでも折れない「自分磨き」次世代リーダーの転職学 ミドル世代専門の転職コンサルタント 黒田真行

未来が予測できないから、今を重視して働く

キャリア形成の理論の中に、「キャリアの8割は偶然によって決定される」という前提に基づいた考え方があるのをご存じでしょうか。米スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が20世紀末に提案した「計画された偶発性理論」というキャリア理論です。

この理論の要点は、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」「その偶発的なことを計画的に導くことでキャリアアップをしていくべきである」という2点にあります。たとえば、「前職時代の上司とたまたま飲みに行った際に、上司が創業した会社に誘われた」というようなケースがそれに相当するかもしれません。もともと予期していなかったできごとが、自分のキャリアに大きな影響を与えることがあり、その積み重ねによって個人のキャリアが形成されていく、というのがこの理論です。

学術的なキャリア理論には、いわば未来重視型の考え方と、現在重視型の考え方があります。「計画された偶発性理論」はあまり将来のことに気を取られると、足元が見えなくなってしまうという考えで、しっかり現在を重視していくべきだという思想でこの理論をまとめています。

その背景には人工知能(AI)の進化や、今回のコロナショックのように、環境の変化が高速化することによって、未来予測が簡単ではなくなっているという事実があります。予測不能な未来から逆算してキャリアを考えるより、今ここにある現実の環境をベースにキャリアを広げていこうという考え方になっています。

それを具体的に進めていくために、クランボルツ教授は以下のような行動指針を持つことが重要だとしています。

(1)「好奇心」 たえず新しい学習の機会を模索し続けること

(2)「持続性」 失敗に屈せず、努力し続けること

(3)「楽観性」 新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること

(4)「柔軟性」 こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること

(5)「冒険心」 結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと

そして、これらの行動指針を実践していくと、予期しない出来事を自分の周りで創り出しやすくなるといわれています。

「今に集中すれば、予期しない出来事にもうまく対応できる。世界中の成功者は、誰もビジョンを持っていて、なおかつ偶然をもモノにしたからこそ、成功しているのだと思います」(ジョン・D・クランボルツ教授)

未来の目的地を定めたうえで、「計画された偶発性理論」が提示した5つの行動指針に基づいて行動を続けることが、キャリアアップにつながるという理論。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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