フリーやパートの賃上げに光 ネット活用、労組が動く

企業労働者の加入(組織)率は日本が17%、米国が10%と低下を続けています。従来型の労組の影響力が低下する一方、SNS(交流サイト)などネットの力は大きいようです。約5千人が加入する日本音楽家ユニオンの土屋学氏は「数千人の声もネットで発信すれば数万人が後押ししてくれる」と話します。

新型コロナの感染を抑えるため、大規模な集会が難しい時期です。ネットなどで上手にまとまる力が試されています。

川口大司・東大教授「労組の存在、合理性ある」

労働組合に関心が集まっている背景について、東京大の川口大司教授に聞きました。

――最近になって労働組合が注目されているのはなぜでしょうか。

川口大司・東大教授

「1980年代までは労働経済学という分野で労組の研究は盛んでしたが、労組の組織率が低下するにつれて下火になりました。最近再び注目を集めているのは、格差、賃金が上がらないといった現象が世界的に共通して起きているからだと思います」

――労組の存在は賃金にどんな影響を与えるのですか。

「日本女子大学の原ひろみ准教授との共同研究で2000~03年の日本のデータを条件をそろえて比較すると、労組に加入する人は加入しない人よりも賃金が17%高い結果となりました。この時期は不景気の時期に当たり、加入者の方が賃金が下がりにくい効果があったようです。労組があると労働組合法にもとづく労働協約の存在により、労組の合意なしに賃金は下げられません。こうした効果だけでも、不況期に賃金が下がりにくくなるストッパーの役割があると思います」

――賃金が上昇する局面でも役割はあるのですか。

「そもそも転職が容易な労働市場を仮定すると、労組の賃上げ要求はあまり意味を持ちません。経営者の立場でみると、賃金が全般的に上がっているときに自社の賃金が低ければ、労働者が逃げていってしまいます。結果として賃金を上げざるを得ないし、労働者も自分の企業の賃金が低ければ転職すればいいのです。一方、転職が難しい日本のような労働市場だと、転職により賃金を上げるというオプションはとりにくくなります。賃金が上がらない労働市場では、労働者がよりよい待遇を目指してスキルを磨く動機も乏しくなります。労組の要求を通じて賃金上昇の道が開かれていれば、スキルを磨き、生産性を上げようという誘因も生まれます」

――労組の組織率は低下を続けています。

「日本でも労働市場が流動的になっている側面はありますが、転職が難しいという固有の性質は残っています。フリーランスのように個人と企業が労働契約を結ぶ交渉をするにしても、個人が単独で企業の細かい業績などについて情報を得るのは難しいでしょう。組合という受け皿があるからこそ、得られる情報があります。経営者にしても、働き方改革を進める上で労組の協力があれば、取り組みを円滑に進めることができます。労組の存在は合理性を失っておらず、今後も必要だと考えています」

――米国のような転職の容易な市場でも労組が注目されている背景は何でしょう。

「実は、労働市場が従来考えられていたほど競争的でないかもしれないという点に注目が集まっています。雇用する側が独占的に力を持っているような状況だと、従来の経済学の想定のように需給関係だけで賃金が上下することは、ないかもしれないのです」

(高橋元気)

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