フリーやパートの賃上げに光 ネット活用、労組が動く

2020年の労使交渉は、新型コロナで集会の開催が難しかったという(11日、東京都港区のものづくり産業労働組合・JAM)
2020年の労使交渉は、新型コロナで集会の開催が難しかったという(11日、東京都港区のものづくり産業労働組合・JAM)

大企業の労働組合と経営者による春季労使交渉の結果、2020年の賃上げ率は7年ぶりに2%を割る見通しです。新型コロナウイルスの感染拡大で景気見通しが不透明となっているためです。一方、フリーランスやパートタイムの間では、賃上げや待遇改善に労組が力を発揮するケースも出てきました。

「生きる危機にひんする事態だ」。5日、約2600人で構成する日本俳優連合は政府に声明文を提出しました。新型コロナでキャンセルとなったイベントの出演料は多くの場合、俳優に支払われません。生活が困窮する一方、政府が発表した支援策は俳優などフリーランスを含んでいなかったのです。

こうした声はインターネットなどを通じて広がり、政府は10日、支援対象を企業の労働者からフリーランスに広げました。すると日俳連は12日、音楽家や落語家の団体と共に記者会見を開きました。子どもの休校で仕事を休んだ人への補償金が企業の労働者が日額上限8330円だったのに対し、フリーランスは一律4100円だったからです。「最低でも企業労働者と同じ水準を」。会見でアーティストらの団体は訴えました。

パートの交渉力も目立っています。流通や外食の労組でつくるUAゼンセンではパートの賃上げ率が2.9%と正社員の2.4%を上回りました。UAゼンセンのパート加入者は107万人と7年間で45%も増えました。人手不足も相まって発言力を強め、一部の労組では家族手当や通勤手当も正社員に近い水準を獲得しています。

研究者も労組と賃上げの関係に注目しています。労働経済学が専門の川口大司・東大教授は2000~03年のデータを分析し、労組の加入者の賃金が非加入者より17%高いとする論文を発表しました。00~03年は不況期にあたり、川口氏は「労組の存在が賃下げのストッパー役になった」とみています。

米国でもプリンストン大のヘンリー・ファーバー教授らが18年の論文で、過去80年にわたり労組加入者の賃金が非加入者より高かったと分析し、「労組は所得分配を均等にする効果がある」と指摘しました。

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川口大司・東大教授「労組の存在、合理性ある」
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