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干上がった太古の地中海 再び満たした大洪水の証拠?

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ナショナルジオグラフィック日本版

穏やかなターコイズブルーの水をたたえる地中海。ここには、ある秘密が隠されている。海底の地下深くに厚さ約3200メートルもの塩の層が存在するというのだ。

不気味なほど白いその塩は、はるか昔に地中海がほぼ消え去ったこと示す数少ない証拠のひとつだ。科学者の中には、地中海はかつて一度完全に蒸発し、サハラ砂漠のようにカラカラに干上がったと考える者もいる。

数十年間にわたり研究が続けられてきたにもかかわらず、地中海が一度消滅し、その後、再び大西洋とつながって復活したという仮説の詳細は、長い間謎のままだった。約500万年前、地中海が消えた後の大穴に再び水が満たされたとすれば、それは地球史上まれに見る大規模な洪水だったと考えられる。ある試算によると、その流量は現在のアマゾン川の500倍にもなるという。

「想像を絶するほどの規模だったはずです」と、その試算を行ったスペイン、地球科学研究所ハウメ・アルメラのダニエル・ガルシア・カステラノス氏は言う。さらに、ガルシア・カステラノス氏らの研究グループは、学術誌「Earth-Science Reviews」の2月号に、地中海の海底の堆積物と最近見つかった溝のような地形が、この大洪水によってできたものであるという新説を発表した。

地質の活動によりジブラルタルで大西洋と地中海が再びつながり、大洪水が起きていなければ、現在わたしたちの知る地中海は存在しなかったはずだ。船がこの海を渡ることもなければ、沿岸に古代から豊かな文化が発達することもなかっただろう。そして、いまでは地中海は世界の水循環に欠かせない原動力になっている。蒸発によって地中海の塩分濃度が高くなり、これが大西洋に流れ込む。そのおかげで、地球を循環する海洋ベルトコンベアの流れが生まれ、気温や嵐のパターンなどに影響を与えている。

また、地球がどのような過程を経てきたのかを理解することは、気温が着実に上昇し、極地の氷床が減少を続ける現在、「とてつもなく重要」だと英ブリストル大学の地質学者、レイチェル・フレッカー氏は言う。

1600メートル以上も海面が低かった

今でも地中海の水は絶えず蒸発を続けており、その量は1年間に深さ約120センチ分にもなる。雨や川から流れ込む水だけではまるで足りず、地中海の水量を補える唯一の水源は、スペインとモロッコの間のジブラルタル海峡から流れ込む大西洋だ。

しかし数百万年前には、地下深くの地殻変動により地表が押し上げられ、この海峡がふさがれた可能性がある。それでも海水は流入していたようだが、地中海の海底近くを流れる塩分濃度の高い水が流れ出る経路は絶たれたのだろう。およそ600万年前には海盆の底で岩塩が堆積し始め、その量は、全世界の77億人に、塩を詰め込んだギザの大ピラミッドを50基ずつ配れるほどに膨れ上がった。

岩塩ができたときに、海水が残っていたのか、それとも完全に干上がっていたのかはまだ解明されていない。一部の研究者は、一帯は洪水が起こる直前にはほぼ干上がり、現在の海水面よりも1600メートル以上低かったと考えている。今のジブラルタル海峡となっている場所に、正確な幅はわからないものの、細長い陸橋が存在していたのだという。

約530万年前、その陸橋を越えた大規模な洪水によって、大西洋と地中海が再びつながった。ただし、地中海に残っていた海水の量と同様、洪水の規模についてもさまざまな議論がある。

証拠が乏しい中、ガルシア・カステラノス氏のチームは、空っぽになった地中海がまたいっぱいになるのに、どのぐらいの時間がかかるのかを検証した。チームが2009年に作ったモデルでは、最初はごくささやかな流れのようでも、すぐに陸地が侵食されはじめた。「あっという間に手のつけられない勢いになります」と、ガルシア・カステラノス氏は言う。

水量が増すにつれて、流路は深く削られ、さらに多くの水が通るようになっていった。ピーク時には、その流れは毎秒1億立法メートルという激流となり、地中海は2年以内に水で満たされたと考えられる。これだけの規模の洪水なら、少なくともオリンピックの水泳プール4億個分の海底堆積物が掘り起こされ、ジブラルタル海峡ができ、海底まで続く峡谷が削り出されたことだろう。

「これほどのエネルギーがあれば、あらゆるものはかき回されて、無秩序な状態に陥るでしょう」。米アリゾナ大学の地質学者で、大規模洪水を研究するビクター・ベイカー氏はそう述べている。

「メッシニアン塩分危機」発見の経緯

1800年代の地質学者たちは、これほどの規模の洪水が起こり得るとは考えてもいなかった。「大規模な洪水は非常にまれなのです」と、ベイカー氏は言う。地球上の生命に後戻りできない変化を与えた6600万年前のチクシュルーブ隕石のように、大規模洪水は1年に1回どころか、100万年に1回起こるかどうかもわからない。

地中海の歴史についての研究が開始されたのは1950年代、海岸で塩の堆積物が見つかり、太古の海の塩分が高かった可能性が示されたことがきっかけだった。1970年代に、グローマー・チャレンジャー号に乗船した研究者らが海底の掘削調査を行ったことで、ついに地中海の歴史に激動の時代があったことを示す塩の名残が見つかった。

日差しに焼かれた干潟の表面にできるひび割れによく似た特徴が、塩の層の上部から見つかった。これは、塩の層の上に水がない時期があったことを示唆していると、ライアン氏は言う。地中海が干上がったとされる現象は、メッシニアンというその地質時代の名前にちなんで「メッシニアン塩分危機」と名付けられた。しかし、失われた水の量やその期間については、今も議論が続いている。

長年にわたり多くの研究者がこの謎に取り組み、さらなる証拠が集まるにつれて、謎はますます複雑さを増してきた。海盆(海底の盆地)で広く生物の化石が見つかったのだ。これは、大西洋と再びつながる直前、その場所がほぼ水に満たされていたことを示していると、オランダ、ユトレヒト大学の地質学者バウト・クリフスマン氏は言う。洪水が流入する前、そうした場所は砂漠ではなく、縮小した海のような状態だったのかもしれない。

今後の掘削調査に期待

ガルシア・カステラノス氏らはまた、堆積物はどこへ行ったのかという重大な疑問にも取り組んでいる。推定1000立方キロの堆積物はおそらく、地中海全体に散らばり、水の流れが穏やかなくぼみなどに集まったと考えられる。しかし、人類が誕生するよりはるか昔に沈殿した堆積物は、今は海底のずっと下のほうに埋まっている。

太古の謎を解く手がかりを見つけるために、研究者らは船から地中海底に向けて地震波を送り、反響を測定した。その結果、地中海の海盆を西と東に大きく隔てるシシリー島付近の海底にあるくぼみで、洪水で流されたとみられる岩や砂の堆積物が発見された。また、古い地震のデータを調べたところ、ある海底火山の後ろに尾のように伸びる岩が、同じく洪水による堆積物であると、今回の論文でガルシア・カステラノス氏らは提唱した。しかし、そのサンプルはまだ採取されていないため、これがいつ形成されたのかは正確にわかっていないと、フレッカー氏は述べている。

答えが見つかるのは、そう遠いことではないかもしれない。フレッカー氏らは、地中海の複数箇所で掘削調査を行い、過去に起こった重要な出来事を示す手がかりをさらに見つけたいとしている。

ライアン氏は言う。「これから行う掘削調査は、実際に地中海に何が、どのように起こったのかという仮説に大きな影響を与えるでしょう」

(文 MAYA WEI-HAAS、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年3月11日付]

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