仲間思いのネズミ 傷つけるのを避ける行動が判明

日経ナショナル ジオグラフィック社

2020/3/30
ナショナルジオグラフィック日本版

ネズミとヒトの脳には、仲間に危害が及ぶのを避ける行動を調節する前帯状皮質という部位がある(PHOTOGRAPH BY VINCENT J. MUSI, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

英語では、裏切り者はしばしば「ネズミ」と呼ばれる。だが、この比喩を考えなおすべきかもしれない。2020年3月5日付けで学術誌「カレント・バイオロジー」に発表された研究により、仲間に危害が及ぶ行動をネズミが避けようとすることが示された。これまでの研究では、実験用のドブネズミが、苦しんでいる仲間を助けることなどがわかっていたが、ネズミの共感性に関する証拠がまた1つ加わった。

この研究では、最初にネズミを訓練し、レバーを押して甘いおやつを出すことを覚えさせる。次に、ネズミがそのレバーを押すと同時に隣のネズミに軽いショックが与えられるようにすると、一部のネズミはそれまで好んで押していたレバーを押すのをやめて、別のレバーを押すようになったという。

ヒトには、仲間に危害を及ぼすような行動を回避する特性があり、このふるまいは、脳の「前帯状皮質(ぜんたいじょうひしつ)」という部位で調節されている。今回の実験で、ネズミの同様のふるまいも前帯状皮質が制御していることが示された。ヒト以外の動物で、仲間への危害の回避に前帯状皮質の働きが必要であることが科学的に示されたのは、これが初めてだ。

今回の論文の共著者で、オランダ神経科学研究所のクリスチャン・キーザーズ氏は、ヒトとネズミの脳に見られる類似は「2つの理由から非常に興味深いです」と話す。

1つは、この類似が、仲間への危害を回避することが哺乳類の進化の歴史に深く根づいているのを示唆していること。もう1つは、前帯状皮質に障害があるサイコパス(精神病質)やソシオパス(社会病質)など、反社会的な行動を起こすパーソナリティー障害を改善する薬の開発に役立つかもしれない点だ。

「現時点では、反社会的な行動を起こす人々の暴力性を効果的に低下させる薬はありません」と キーザーズ氏は話す。そうした人々にとって、他者に危害を及ぼすのを回避できる方法が明らかになれば、強力な助けになるはずだ。

ヒトのようなネズミ、ネズミのようなヒト

最初の実験で、キーザーズ氏のチームは、オスメス合わせて24匹のドブネズミを訓練し、おやつが出てくる2種類のレバーを押すことを覚えさせた。やがてネズミがどちらか一方のレバーを好んで押すようになったら、ネズミがお気に入りのレバーを押しておやつを手に入れると、隣室のネズミの足にショックを与えるように設定を変えた。

9匹のネズミは、仲間の悲鳴を聞くとすぐにお気に入りのレバーを押すのをやめ、あまり好きではないがおやつは出てくる方のレバーを押すようになった。

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