紙おむつ復活がリーダーの原点 現場全員と徹底対話花王社長 沢田道隆氏(下)

――社長に就任して最も苦労したことは何ですか。

「社長就任以前は研究所など1つの部門をみていました。部門のリーダーとしての心得はそれなりに体得していましたが、会社全体の経営となると話は別です。研究部門のイメージはわきますが、経験のない会計財務や生産などはイメージをつかむのが難しかったです。そこで、部門ごとの会議にも積極的に参加し、少し飛んだ質問をしてみました」

「例えば会計財務では、損益計算書(PL)は比較的理解しやすいです。しかし、貸借対照表(BS)は資産のイメージの捉え方を理解するのが非常に難しい。『BSは本質的にはどう考えればいいんですか』と会議で質問しました。プロの答えをしてくれましたが、それでも理解しきれない部分もありました。会計財務のメンバーからしても、そんな質問するんだ、という気づきがあったと思います。普段考えないことでも、そう言われれば改めて考えてみようかとなります。本質的な質問を投げることを意識しています」

社長の仕事は部門のつなぎ方を考えること

――本質的な質問を意識するのはなぜでしょうか。

「組織の資産を最大化するためです。社長の仕事はデザインを描き、様々な部門のつなぎ方を考えることです。そのためには自分が経験していない部門を理解する必要があります。部門ごとの特性が分からなければ、それぞれの最適なつなぎ方は見つかりません」

「特に1年目はつなぎ方に苦労しました。徐々に色々な部署についての理解が深まり、この部門を活性化するにはどうすればいいか、部門と部門をどのようにつなげばいいか分かってきました」

「人のモチベーションを高め、組織の資産を最大化する。今後さらに進めることができれば、従業員数は今のままでも、花王は倍くらいの売り上げ規模に成長できる余力があると思います」

1971~90年に社長を務め、花王の中興の祖といわれる丸田芳郎氏の著書「一心不乱」を愛読する。沢田社長の父が花王に勤めていた縁で学生時代から面識があり、「花王に入社するきっかけになった」。自身と同じく研究者出身の丸田氏から薫陶を受け、考え方から多くを学ぶ。すでに10回以上読み、余白は書き込みで埋まっている。「立場が変わって読み直すと、違う感じ方をする」という。他にも経済書や歴史本など幅広いジャンルの本から物事の考え方を吸収する

「経営はあまり長くやりすぎるものでもないと思っています。自分としてはつなぎ方を最大化しているつもりですが、それは自分の枠は超えません。会社がもう一段階大きくなるには、違う枠組みでつなぎ直すことも必要です。次のリーダーには私とは違ったグランドデザインを描ける人がいいと思っています」

「同じメンバーでもリーダーが変われば組織は変わります。資産の最大活用、言い換えれば、従業員が精いっぱい頑張っている努力をいかに大きな成果にして社会に役立てるか。本質的にリーダーのあるべき姿は変わらないと思います。どんな成果にするかは経営者次第です」

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沢田道隆
1955年大阪府生まれ。81年阪大院工学研究科修士課程修了、花王石鹸(現花王)入社。素材開発研究所室長やサニタリー研究所長などを経て2006年執行役員。12年6月から現職。

(川井洋平)

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