出産前に次の子、ワラビーのびっくり妊娠 哺乳類唯一

日経ナショナル ジオグラフィック社

オーストラリアのヒールズビル自然保護区のオグロワラビー(Wallabia bicolor)の子(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)

驚きの繁殖サイクル

繁殖サイクルが始まるのは、1月か2月にメスのワラビーが交尾したときだ。前年から妊娠していたメスは、その1日か2日後に前年からいた胎児を出産する。生まれた子どもは育児のうに移動し、そこで成長する。新たに受精した胎児(胚盤胞とも呼ばれ、80個から100個の細胞で構成されている)は、子宮内にとどまり、「胚休眠」と呼ばれる休眠状態に入る。

メンジーズ氏によると、その間も最初の子は育ち続け、9月ごろになると、育児のうから出る準備が整う。ちょうどそのころは、南半球に春が訪れて新緑が芽吹く季節だ。

子どもは育児のうで乳を飲むことも徐々に減っていき、12月ごろに乳離れする。このタイミングで、休眠していた胎児の成長が始まり、1カ月後に誕生する。それまでにメスは排卵しており、次の交尾も終えている。

学ぶことはたくさんある

このサイクルは、10匹の飼育されているオグロワラビーに対して超音波スキャンを実施した結果、判明したことだ。年間を通してメスを撮影し続け、交尾のタイミングも記録した。交尾後、2番目の子どもがすでに育児のうの中に入っているときに、10匹中9匹で休眠中の胎児(胚盤胞)を確認できた。

体外受精について研究しているガードナー氏は、胚休眠について理解することは非常に重要なことだと話す。

「この複雑なプロセスを解明できれば、胚を研究所で休眠状態のまま保管できるようになり、低温保存する必要はなくなるかもしれません。有袋類から学べることは、まだたくさんあるのです」

(文 DOUGLAS MAIN、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2020年3月4日付]

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